水辺や道端でよく見かける野草の蓼(たで)ですが、食べられる草であることをご存じですか?
「蓼食う虫も好き好き」ということわざは「蓼の辛い葉を好んで食べる虫もいるように、好みは人それぞれ」という意味です。
食用にされる蓼(たで)はヤナギタデという種類で、その辛味から日本では古くから薬味や香辛料として使われてきました。
ヤナギタデの育て方や、蓼(たで)のおもな品種についてご紹介します。
蓼(たで)の基本情報
学名 | Persicaria(イヌタデ属全般)・Persicaria hydropiper(ヤナギタデ) |
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英名 | water pepper(ヤナギタデ) |
その他別名 | マタデ・ホンタデ |
科名 | タデ科 |
属名 | イヌタデ属 |
原産地 | 北半球亜寒帯~亜熱帯 |
蓼(たで)の特徴
蓼(たで)は夏から秋にかけ、ピンクや白の小さな穂状花を付ける植物です。
日本全土の水辺や湿地、道端などでよく見かけらます。
本来は「蓼」という名前の植物は存在せず、イヌタデ属の20種ほどの植物の総称です。
刺身のツマなどとして食用にされるのはヤナギタデです。
刺身のツマや冷ややっこの薬味として添えられている赤紫色のスプラウト、というとイメージできる方も多いのではないでしょうか。
鮎の塩焼きに添えられる「たで酢」も、ヤナギタデの葉をすりつぶし酢で伸ばした調味料です。
蓼(たで)には辛味があり、かじると口がただれたように感じることから「ただれ」転じて「たで」という名前になったといわれます。
道端にたくさん生えているため雑草のイメージが強い蓼(たで)ですが、種類によって食用、観賞用、さらには染料の原料になるものもあり、非常に有用な植物です。
蓼(たで)の種類
ヤナギタデ(学名:Persicaria hydropiper)
蓼(たで)としてもっともポピュラーな品種です。薬味に用いられるベニタデ・アオタデの原種です。
薬味には発芽したての新芽を使用するため芽タデとも呼ばれます。
ピリッとした辛みがあり、食用のほかに生薬としても利用されています。
イヌタデ(学名:Persicaria longiseta)
ヤナギタデよりもひとまわり小さい品種です。
イヌタデには辛味はなく特徴のない味なので、食用にはされません。
用途のない植物の名前には“イヌ”がつけられることがあり、イヌタデの名前も食用にならないことからきています。
小さな赤い色の花を子どもが赤飯に見立てて遊んだことから「あかまんま」という別名があります。
花言葉は「あなたの役に立ちたい」です。
ひとまわり大きな「オオイヌタデ」という品種もあります。
オオケタデ(学名:Persicaria orientalis)
東南アジア原産で、草丈が2mほどまでになる大型種です。
江戸時代に観賞用として中国から持ち込まれ、現在ではあちこちで野生化しています。
全体に白く柔らかい毛が生えているのが名前の由来で、ヤナギタデ同様食用・薬用でも用いられます。
花言葉は「汚れない心・思いやり」です。
サクラタデ(学名:Polygonum conspicum)
一年草の多い蓼(たで)の中では珍しい多年草です。
湿地や休耕田など湿り気の多い土地に自生します。
小さめですが可憐な花を咲かせ、ビオトープに売る植物として人気があります。
花言葉は「愛くるしい」です。
タデアイ(学名:Persicaria tinctoria)
東南アジアが原産で、かつては藍色の染料として利用されていた植物です。
現在は合成染料の普及により、あまり使用されていません。イヌタデに非常に似ていますが、葉を傷つけると傷口が青色になります。
花言葉は「美しい装い」です。
蓼(たで)の栽培・育て方
蓼(たで)は日当たりのよい湿地を好みます。
丈夫な植物なので、水切れさえさせなければどんどん育ちます。
ヤナギタデを育てる場合は、花を咲かせたり葉を収穫したりする場合と芽タデを収穫する場合で育て方が違うので注意が必要です。
蓼(たで)の育て方情報
分類・形態 | 草花・野草・一年草 |
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草丈・樹高 | 30cm~80cm(品種により異なる) |
開花の時期 | 5月~10月(品種により異なる) |
花色 | 白・ピンク・赤 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 強い |
特性・用途 | 食用・薬用・染料・ビオトープ |
栽培難易度 | やさしい |
栽培スケジュール
植え付け | 春~秋 |
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肥料 | 元肥のみ |
開花 | 8月~10月 |
収穫 | 5月~9月(新芽) |
栽培に必要な準備・環境
日当たり・置き場所
蓼(たで)は日当たりがよい水辺や湿地、田んぼなどの水気の多い場所を好みます。
池やビオトープ、水連鉢などがあればそれらで育成が可能です。
水辺がなくとも育てることはできますが、水切れに注意が必要になります。
芽タデの収穫が目的の場合は、育苗箱などに川砂を敷いて育てます。
水やり
湿地に生息する植物なので、水辺に植えたもの以外はしっかり水やりをする必要があります。
乾燥する季節は水切れに注意し小まめに水やりをしましょう。
肥料
特に必要ありませんが、鉢やプランターに植える場合は土に有機質肥料を元肥として混ぜておいてもよいです。
芽タデを育てる場合は、肥料があると紅色が出なくなるので肥料を与えてはいけません。
用土
土質は選びませんが、芽タデを育てる場合はきれいに洗った川砂を使用しましょう。
温度
生育温度は10℃~30℃です。
耐寒性・耐暑性ともに強いので特に配慮は必要ありません。
蓼(たで)を育てるときのポイント
種まき
丈夫な植物なので観賞用の場合は植えたい場所にばら蒔きで大丈夫です。
芽タデ栽培の場合は川砂を敷いた上に厚めに種をまき、同じく川砂で薄く覆います。
季節にもよりますが、どちらも夏場で1週間、春・秋で2週間くらいで発芽します。
芽タデ栽培は砂が乾燥しないよう、新聞紙やビニールをかけておくのもよいでしょう。
植え付け
苗から植える場合は苗穴にたっぷり水を入れ、浅めに植え付けます。
ふやし方
種まきか挿し芽で増やせます。
こぼれ種でもどんどん増えます。
挿し芽をする場合は、切り取った枝を清潔な水に挿しておきます。
花が付いている枝を花瓶やグラスに飾っておいてもよいでしょう。
1週間ほどすると水中の節から根が出てくるので、根がある程度育ったところで植え付けをします。
種の収穫
蓼(たで)は種が熟すと、花穂を軽くさわっただけで種がぽろぽろと落ちてきます。
種は2~3ヵ月休眠するので、しばらく保管してから種まきをしましょう。
芽タデの収穫
種をまいてから夏は1週間、春・秋は2週間ほどで発芽します。
双葉のうちに包丁やナイフで刈り取りましょう。
気を付けるべき病気・害虫
病気や害虫は特にありませんが、種まき後は雀に注意しましょう。
殺虫剤・殺菌剤
特にありません。