- グラキリスの発根管理に必要なものや手順が理解できる
- グラキリスのベアルート株を入手したとき、発根管理が自分でできる
- グラキリスの発根管理は、そう簡単ではないことがわかる
- 上級者になると根のないグラキリスを発根させることができるようになる
グラキリスについてSNSや動画で調べていると「発根管理」という言葉がよく出てきます。
なぜ、グラキリスは発根管理が必要なのでしょうか。
こちらの記事では、ベアルート株の発根管理のやり方と、必要な道具や手順を解説します。
難しい作業ですが、上級者だけでなく、グラキリスを育て始めたばかりの人も、ぜひ読んでみてくださいね。
グラキリスの発根管理が必要な理由
パキポディウム・グラキリスの発根管理が必要になるケースは、大きく分けて次の2つの理由が考えられます。
- 現地球(ベアルート)を入手したとき
- 根腐れして根っこがなくなったとき
詳しく見てみましょう。
【理由1】現地球(ベアルート)を入手したとき
発根管理をする場合のほとんどは「ベアルートを入手したとき」ではないでしょうか。
「bare(ベア)」とは、裸・むき出しのこと、「root(ルート)」は根っこのことで、原生地で地堀りして輸入された「根が切られた抜き苗」のことを、「ベアルート株」と言います。
グラキリスのベアルート株は、原生地の過酷な環境に耐えて育っているので、その姿は珍奇でワイルド!
マニア垂涎の姿かたちをしています。
だから、難しいと分かっていても欲しくなってしまうのです。
現地球ベアルート株は、3月~4月をメインに販売されているようです。
なぜ根っこが切られているの?
原生地で掘り上げたグラキリスを輸入する際、土がついていると、日本にない病害虫や種子を持ちこむ可能性があり、空港の検疫で没収されてしまいます。
そのため、根っこをカットして土を落とし、硫黄などの殺菌剤が塗られた状態で輸入されます。
根がないので、このままだと枯れてしまいますよね。
そこで、ベアルート株を購入した人は、急いで発根作業をする必要があるのです。
成功率はたったの30%!
「初心者はベアルートに手を出すな」というアドバイスをたまに見聞きします。
ベアルートの発根作業自体は簡単で、理科の実験のようで楽しいのですが、その発根成功率は、30%とも5%とも言われています。
成功率は、経験値の他に、「鮮度」や「運」にかなり左右されるようです。
株自体に生命力がなければ、発根せず枯れてしまいます。
少しでも成功率を上げたければ、マニアの信頼の厚い専門店など、身元がはっきりしたところから、新鮮なベアルートを購入するようにしましょう。
【理由2】根腐れして根っこがなくなったとき
根腐れして瀕死の株にも、発根管理が必要です。
根腐れした株を掘り起こしたら、腐って傷んだ根っこを取り除きましょう。
根の量に対し、葉が茂りすぎていたら、葉っぱを減らしましょう。全部取ってしまっても構いません。
塊根部分にしわが寄っていたり、へこみがあったり、よくない兆候があると復活する可能性は低くなります。
そうなると上級者でも難しいので、「ダメ元」と割り切って発根管理をしてみましょう。
グラキリスの発根管理で必要なもの
グラキリスの発根管理には「これ」といった正解がありません。
努力しても必ずしも発根するとは限らない作業です。
少しでも成功率を上げるために、念入りに下調べをしておきましょう。
SNSやYouTubeなどの動画では、グラキリス栽培のベテランや、自分と居住地が似た環境の人が、使ってよかったものを紹介している場合があるので、参考にするとよいでしょう。
グラキリスの発根管理でよく使われるものは、
- 発根促進剤
- 塊根を漬ける容器
- 剪定ばさみ(園芸ナイフ)
- 黒プラ鉢
- 多肉の用土&鉢底石
- 麻紐
- 土中温度計&園芸用ヒーター
- サーキュレーター
- 活力剤
- 竹串
- 霧吹き
などです。
この中でいくつかのアイテムを、掘り下げて見てみましょう。
発根促進剤
グラキリスの発根管理で効果を発揮するのが「発根促進剤」です。
主に「オキシベロン液剤」や「ルートン(粉末)」が使われます。
どちらか一方だけでも効果はありますが、念のため両方使う人が多いようです。
「オキシベロン液剤」は、大量の挿し木に使う発根剤で、農家向けなので、実店舗にはあまりなく、農協や通販などで手に入れましょう。
インドール酢酸が主な成分で植物成長ホルモン「オーキシン」の作用により発根を促します。
水で規定量に薄めた液剤に、根元を丸一日漬け込んでから植え付けます。
「ルートン」も植物成長ホルモンで、1-ナフチルアセトアミドが主成分。
根が生える付近に粉をまぶして植え付けるだけで簡単です。
一般向けの商品なのでホームセンターでも購入できます。
黒プラ鉢
植え付ける鉢は、黒色のプラスチックの鉢が主流です。
なぜ黒かというと、日光に当たると鉢内の温度が上がりやすく、グラキリスの発根を促進するからです。
発根後の生長も、黒い鉢のほうがよく育つようです。
また、透明のプラ鉢も根っこの生長を外から確認できるのでおすすめ。
その場合、光が根の伸長成長を阻害するので、黒色の鉢と二重鉢にするとよいでしょう。
剪定ばさみ(ナイフ)
グラキリスの現地球は根っこがないと言いましたが、少しだけ主根が付いています。
主根の断面が、緑色を帯びて湿っているところまで切り詰めると、そこから発根してきます。
主根が少しもついていない株の場合は、塊根部分の皮を、みずみずしい細胞が出てくるまで削いでいきます。
より高度な技術を要するので、よく切れるナイフを用意しましょう。
土中温度計&園芸用ヒーター
グラキリスは、土中温度が高くないと発根しません。
土中の適温は30℃くらいが適温で、最低でも25℃以上ないと発根は難しいと言われています。
土中温度は外気温では分からないので、鉢内に挿す「土中温度計」を購入します。
夏真以外に発根管理を行う場合は、ヒーターも必要になります。
鉢に直接巻き付けられるシートタイプの園芸ヒーターがおすすめです。
グラキリスの発根管理をおこなう手順
グラキリスのベアルートを入手したら発根管理を行いましょう。
手順は以下の通りで、作業自体は初心者でも簡単に行えます。
- 殺菌剤を洗い、主根をナイフで切る
- オキシベロン液に漬ける
- 乾かしてルートンをまぶす
- 黒プラ鉢に植えつける
- 発芽するまで半日陰で管理しヒーターで温める
次に手順を詳しく見てみましょう。
1.殺菌剤を洗い、主根を切る
現地球のベアルート株は、切られた根っこに硫黄の殺菌剤が塗られています。
そのまま植えてもいいのですが、気になる人は硫黄を洗い流しましょう。
その後、主根をフレッシュな細胞が出てくるまで、様子を見ながら小刻みにカット。
なるべく根を長く残しておけば、失敗したときに再度チャレンジできますよ。
2.オキシベロン液に漬ける
オキシベロンを水道水で40倍に薄めてバケツや保存容器などに入れ、グラキリスの塊根の根の部分のみを24時間ほど漬け込みます。
それ以上漬けても逆効果なので、丸一日で十分です。
漬け込みが終わったら株を自然乾燥させましょう。
3.乾かしてルートンをまぶす
オキシベロンに漬け込み後、風通しの良い日陰で2~3時間乾かしたら、根の部分にルートンの粉をまぶします。
つけすぎは良くないので、刷毛などで少し振るい落します。
4.黒プラ鉢に植えつける
黒いプラ鉢に、鉢底石を多めに入れ、その上に多肉の用土を足したら、グラキリスの根の部分のみを植え付けます。
塊根が深く植わると腐ってしまうので、浅く植え付けるようにしましょう。
根が張るまでグラグラするので、グラキリスを傷つけないよう注意しながら、株と鉢が動かないよう、麻紐などで固定します。
地温を計るための土中温度計と、鉢内の水分を見るために竹串も差しておきましょう。
5.発芽するまで半日陰で管理し、ヒーターで温める
グラキリスは直射日光を好むのですが、根がない時は明るい半日陰で育てます。
発根する土の温度は30℃前後。真夏以外は、ヒーターでの温めが必須です。
室内で管理する場合はサーキュレーターを回して風通しを良くします。
根が出るまで、時々霧吹きで湿度を与えるとよいでしょう。
およそ1カ月半で新根を確認することができます。
2ヶ月経っても根が出なければ「1.主根を切る」からやり直しましょう。
株が凹んで皺になっていたり、ナイフで切っても新鮮な部分が出てこなかったり、生気がなければ、枯れてしまった可能性があります。
グラキリスの発根管理が失敗する原因
画像出典:https://gardenslibrary.com/botanical-book/succulents/gracilius/
グラキリスのベアルート株の発根成功率は、よくて30%と言われているように、残りの7割は発根しないで終わってしまう可能性があります。
グラキリスの発根管理が失敗する原因には、どのようなものがあるのでしょうか。
グラキリスの鮮度が悪く生命力がない
手順通りに作業をしても枯れてしまう場合、ほとんどが、株自体の鮮度・生命力のなさが失敗の原因です。
手に持った時に、ずっしり重みがある株がよいベアルート株と言われています。
見た目よりも軽い株は、再生率が下がるようです。
現地の業者が掘り上げたものを、現地あるいは日本人のバイヤーが仕入れて、日本に輸入しています。
良心的な専門店なら、入荷してすぐに販売を始めるので、ショップのSNSやメルマガなどをフォローしておくとよいでしょう。
鉢内の水分量が多い・少ない
フリマサイトで購入した株が枯れてしまった場合、元々枯れたグラキリスだったのかもしれません。
フリマサイトやネットオークションでは、匿名なのをいいことに、粗悪な商品を出品している場合があります。
出品者の中には、発根に失敗したときに「もったいないので半額でもいいから販売しよう」と考える人がいるかもしれません。
休眠中のグラキリスは元々枯れたような見た目なので、写真では分かりにくいものです。
初心者は、なるべくしっかりした専門店で購入し、相場より安いものには手を出さないようにしましょう。
まとめ
グラキリスの発根管理のやり方、必要な道具、手順について解説しました。
枯れてしまうことが多いので、初心者は手を出すなと言われますが、やってみないことには先には進めませんよね。
機会があったらぜひ発根作業にチャレンジしてみてください。
発根までの日々が、グラキリス愛を深めること間違いなしです!
もし失敗しても、誰もが通る道なのであまり落ち込まないでくださいね。