
水面から茎をのばし、清純な花を咲かせる蓮(ハス)の花。
泥の中から上がってきて汚れのない美しい花を咲かせるので、仏教では清浄を表す花として知られています。
今回は、清らかな魅力をもった蓮の花について、その特徴や全国各地の名所、植え方・育て方などの栽培方法を詳しくご紹介します。
蓮の花の基本情報
学名 | Nelumbo nucifera |
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英名 | Lotus |
科名 | ハス科 |
属名 | ハス属 |
原産地 | 熱帯~温帯アジア・オーストラリア北部(ヌシフェラ種)・北アメリカ(ルテア種) |
蓮の花の特徴
7月~9月の暑い夏の季節、昼までの早い時間にだけ、涼やかで美しい花を咲かせる蓮(ハス)。
蓮は水の底の泥の中に栄養を蓄える地下茎、塊茎(かいけい)をつくり、そこから芽を伸ばして水面上に葉や花をつける植物です。
蓮の塊茎(かいけい)は、日本人にとってお馴染みの野菜、蓮根(レンコン)になります。
食用の蓮はこの部分を重視して栽培されたものです。
蓮の花の睡蓮(スイレン)の違い
蓮の花とよく似た水生植物に睡蓮(スイレン)があります。
蓮の花を思い浮かべたとき、混同してしまう方も多いのではないでしょうか。
蓮と睡蓮は花の姿も似ているうえ、花期も重なるので、見分けにくいですよね。
分かりやすい見分け方のポイントは葉の状態です。蓮の葉は切れ込みがなく、丸い形をしており、水面から立ち上がっています。
一方、睡蓮の葉は切れ込みが入っており、水面にぺたりと着いて浮かんでいます。
また、葉と同様、蓮は花も水面から立ち上がって咲き、睡蓮は水に浮かぶように咲いているので、葉と花をよく観察するとすぐに判別できるようになります。
蓮の花の名所
美しい蓮の花を観賞できる名所は全国各地にあります。
清々しい蓮の花を眺めにお近くのスポットにお出かけしてみてはいかがでしょうか。
いずれも午前中に花開きますので、早い時間にお出かけください。
千秋公園(秋田県)
夏になると久保田城址の掘に大賀ハスが咲き誇ります。
伊豆沼・内沼のハス(宮城県)
沼一面に咲く蓮を遊覧船に乗って観賞できます。
白鳥の飛来地としても知られます。
不忍池(東京都)
上野恩師公園にある天然池です。
7月頃が見ごろです。
花はす公園(福井県)
世界の蓮の花約130種が観賞できます。
開花時期には「はすまつり」が開催されます。
三室戸寺(京都府)
本山修験宗の別格本山の庭園。
春のツツジ、初夏のアジサイとともにハスの花の名所です。
大賀ハス 平池公園(兵庫県)
太古の蓮「大賀ハス」をはじめ、珍しい蓮や菖蒲、睡蓮などが楽しめます。
大賀ハス(和歌山県)
開花時期になると、約1300㎡の田んぼ一面に大賀蓮が咲きます。
宮地やすらぎの里(岡山県)
誠ハスをはじめ、沢山の蓮が60アールの休耕田に咲きます。
唐比湿地公園・唐比ハス園(長崎県)
開花時期になると公園内のハス池に、蓮や睡蓮が咲き誇ります。
蓮の花の種類
ハス属にはヌシフェラ種(Nelumbo nucifera)とルテア種(N. Lutea)の2種があります。
ピンク色の花を咲かせるヌシフェラ種がハス、黄色い花を咲かせるルテア種はキバナハスと呼ばれます。
この2つの種を交配させて、現代では沢山の園芸品種が作り出されています。
キバナハス
北アメリカ原産の種です。
クリーム色~黄色の花をつけます。
普通のハスに比べ花つきがあまり良くありません。
大賀ハス
千葉県千葉市検見川の落合遺跡で発掘された、2000年以上前のハスの種を育てた品種です。
名前は発芽に成功した大賀一郎博士にちなんでつけられました。
ミセス・スローカム
八重咲きの品種です。
花の直径は20~30㎝ほどの大輪です。
花付きがよく、花が咲き進むとピンクからやや黄色に変化します。
蓮の花の栽培・育て方
日当たりの良い場所で、常に水を張った状態で育てます。
水を腐らせないように、また蒸発して減らしてしまわないよう、水やりに注意が必要です。
池がなくても、大きなかめや樽、鉢などで栽培することができます。
蓮の花の育て方情報
分類・形態 | 水生植物・草花・多年草 |
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草丈・樹高 | 50~100㎝・水深40㎝ |
開花の時期 | 7月~9月 |
花色 | 白・ピンク・黄 |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | 強い |
特性・用途 | 落葉性 |
栽培難易度 | やや難しい |
栽培スケジュール
植え付け | 3月 |
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植え替え | 3月 |
肥料 | 4月~9月 |
開花 | 7月~9月 |
栽培に必要な準備・環境
日当たり・置き場所
日当たりの良い場所が適しています。
半日以上、直射日光の当たる場所を選びましょう。
日に当たることで花のつきが良くなります。
池以外にも鉢や樽で栽培することができます。
その際は、大型種は直径60㎝以上、中型種は直径50㎝以上、小型種は直径30㎝以上の水連鉢や樽を用意しましょう。
四角い容器だと根が角にぶつかり成長を阻害するので、丸い容器を使います。
水やり
水生植物なので、植えつけた鉢や池は常に水を張った状態にします。
土の表面から5~10㎝は水深が必要です。
季節に応じて水やりの量を調整します。
特に夏は水が蒸発して減りやすいので、多めに入れます。
秋冬は減った分の水を入れれば良いですが、水が腐らないように常に気を付けます。
水をあふれさせるようにして入れ替えましょう。
また、冬季は水が凍ってしまわないよう注意が必要です。
ボウフラ対策として、メダカや金魚を同じ水の中で飼っても良いでしょう。
肥料
元肥として、緩効性化成肥料を用土に施します。
生育が旺盛になる4月~9月は、1ヵ月に1回のペースで追肥を行います。
緩効性化成肥料を用土に埋めて施します。
用土
鉢植えの場合、粘土質で肥沃な土を用意します。
田んぼの土が入手できれば、これが最適です。
田土8:完熟腐葉土2の割合で混ぜた用土を作ります。
田土がない場合は、赤玉土8:完熟腐葉土2の割合で混ぜ合わせた用土を作ってもよいでしょう。
赤玉土の粒がつぶれるほどよく練ります。いずれも苦土石灰を少量混ぜます。
蓮の花を育てるときのポイント
選び方
蓮(ハス)は新芽のついた塊茎(レンコン)を苗として植えつけます。
塊茎は色つやが良いもの、芽や切り口が腐っていないものを選びます。
植えつけ
植えつけは3月が適期です。
新芽をつけた塊茎(レンコン)を洗い、3~4節にカットして植え付けます。
植えつけ鉢を用意し、用土を3分の1ほど入れます。
鉢底には元肥を入れ、塊茎に当たらないように土をかぶせておきましょう。
新芽を上にして塊茎を水平に入れ、上からさらに用土を足します。
最後に水を注ぎ入れ、水面から鉢土の表面まで深さ5~10㎝になるようにします。
芽が伸びると痛みやすくなるので、植えつけの塊茎を手に入れたら、早めに植えつけるようにしましょう。
植え替え・鉢替え
鉢や樽で育てていると、すぐに根がいっぱいになります。
1年に1回、株分けを兼ねて植え替えを行いましょう。
鉢を傾けて水を捨てたら、根を傷めないように塊茎を丁寧に取り出します。
塊茎が乾燥しすぎると腐ってしまうことがあるので、植え替えは手早く行いましょう。
ふやし方
株分けと種まきで増やすことができます。
株分け
3月の植え替えの際に行うと良いでしょう。
株分けする元の塊茎を取り出し、泥を落とします。
新芽をつけている部分を3~4節でカットし、別の鉢に植えつけます。
種まき
花が咲き終わり、残った果実の穴に種ができます。
種が黒くなったら採取して、日陰で乾燥させ、保管しておけば、翌年の種まきに使うことができます。
種まきは4月~5月が適期です。種は皮が硬く、発芽しにくいのでヤスリなどであらかじめ削ります。
種の中の白い部分が見えるまで削りましょう。
容器に入れた水につけて発芽させます。
4~7日で発芽するので、葉や根が出るまでそのまま育てて、その後用土に定植しましょう。
気を付けるべき病気・害虫
病気
腐敗病に気を付けましょう。
腐敗病は地中の菌が原因の病気です。
葉が枯れ、塊茎が黒くなって腐ってしまいます。
土の乾燥がきっかけになりやすいので、いつも水を張った状態を保ちます。
害虫
アブラムシにご注意ください。
殺虫剤・殺菌剤
害虫は見つけ次第、市販の殺虫剤を使用して駆除しましょう。