うす紙のような繊細な花びらが幾重にも重なったラナンキュラス。
その華やかで美しい花は、結婚式などお祝いのブーケに用いられることでよく知られています。
球根の管理をはじめ、育て方のポイントを押さえれば、ラナンキュラスは鉢植えや花壇の花として育てることができます。
秋に植え込んで、早春から春にかけ次々と咲く可憐な花を楽しみましょう。
ラナンキュラスの基本情報
学名 | Ranunculus asiaticus |
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英名 | Buttercup |
その他別名 | ハナキンポウゲ(花金鳳花) |
科名 | キンポウゲ科 |
属名 | キンポウゲ(ラナンキュラス)属 |
原産地 | 中近東からヨーロッパ南東部 |
ラナンキュラスの特徴
ラナンキュラスの名前は、ラテン語の「rana(カエル)」を語源としています。
葉がカエルの足に似ていること、ラナンキュラス属の多くが湿地帯を好むこと、からつけられたそうです。
昨今流通している園芸用のラナンキュラスは過湿が苦手。
カエルとはあまり縁がないので、少し意外ですね。
ちなみに、英名の「バターカップ」は原種のラナンキュラスが黄色い5枚の花弁をつけていることから、バターの器に見立ててつけられています。
ラナンキュラスは、花が豪華で見栄えが良い、水もちがよく切り花に向いている、縁起の良い花言葉をもっている、などの理由から贈り物の花束によくあしらわれます。
その繊細な美しさから人気があり、品種改良が盛んに行われています。
バラエティ豊かな花色に加え、花の形も実に様々。
バラのような八重咲きだけでなく、一重のもの、カーネーション咲き、花びらが丸まったカール咲きなどがあります。
草丈も、鉢植えやプランターに適した背の低いもの、花壇や切り花に向いた背の高いものなど、品種によって大きく異なります。
目的にあわせて、種類を選ぶことができますね。
ラナンキュラスは、秋に植え、春に咲く球根植物です。
1個の球根から5~20本の花茎が立ち上がり、一つの花茎に数輪の花がつきます。
うまく球根を管理できれば、何度でも沢山の花を咲かせることができるので、楽しみが何年も続きます。
球根の管理に慣れていない初心者は、まず鉢植えの苗を購入し、扱いに慣れながら育ててみるのも良いでしょう。
また、品種改良によって、近年暖地において地植えで夏越し・冬越し可能な、強い園芸品種が出てきています。
手間をかけずに楽しみたい場合は、園芸店で探してみましょう。
ラナンキュラスの種類
ラナンキュラスは品種改良が進み、園芸品種が沢山あります。
代表的な3つのシリーズを紹介します。
ビクトリアシリーズ
生育が早く、沢山の花が咲く定番のシリーズ。
草丈があまり高くならないので、育てやすく、葉弁が幾重にも重なった豪華な花を咲かせます。
ラックスシリーズ
花びらに光沢があります。
丈夫で比較的耐寒性があります。
地域によっては地植えしてそのまま翌年も花を咲かせることがあります。
50~80㎝と背が高くなる割に株元の茎がしっかりしていて倒れにくいです。
スプレー咲きで、次々に花が咲きます。
モロッコシリーズ
花の中心のめしべが目立つ個性的な種類です。
小さな花びらが放射状に開いて咲きます。
ラナンキュラスには珍しく、黒っぽい花色もあります。
ラナンキュラスの栽培・育て方
日当たりと風通しの良い場所を選んで育てます。
秋に球根を植えて、春の開花を楽しみます。
冬は霜や凍結に注意し、夏は球根が腐らないよう、堀り上げて管理するなど、育て方に少しコツがあります。
開花中は花びらに水がかからないよう、水やりを行いましょう。
ラナンキュラスの育て方情報
分類・形態 | 草花・球根・多年草 |
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草丈・樹高 | 30~50㎝ |
開花の時期 | 3月~5月 |
花色 | 黄・白・赤・ピンク・紫・緑・オレンジ・複色 |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | 弱い(暑くなると休眠) |
特性・用途 | 鉢植え・花壇・切り花 |
栽培難易度 | やや難しい |
栽培スケジュール
植え付け | 10月~12月 |
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植え替え | 10月~12月 |
肥料 | 1月~3月・10月~12月 |
開花 | 3月~5月 |
栽培に必要な準備・環境
日当たり・置き場所
日当たりと風通しの良い場所が適しています。
真冬は防寒し、北風が当たらないようにします。
軒下などで管理し、霜に当たらないように注意しましょう。
開花中は雨にあてない方が長い期間花を楽しめます。
雨が続くとき、鉢植えは軒下などに移動させましょう。
水やり
土の表面が乾いたら、たっぷり与えましょう。
過度な水分は球根を腐らせてしまうので気を付けます。
水やりの時、花びらに水がかかるとしみになってしまいます。
花びらにかからないように、そっと水やりしましょう。
5月下旬、葉が黄変してきたら乾かし気味にし、すべての葉が黄色になったら水やりを止めて完全に乾かすようにします。
肥料
鉢植え、庭植えどちらの場合も、元肥として緩効性化成肥料を施します。
追肥は10日に一回薄めた液体肥料を与えるか、緩効性化成肥料を置き肥します。
球根を腐りにくくするため、追肥は3月末で止めましょう。
用土
水はけが良く、有機物が豊富な土が適しています。
市販の培養土を利用すれば問題なく育ちます。
土を配合する場合は、赤玉土小粒5:腐葉土3:酸性度調整済ピートモス2などの割合にし、有機石灰とリン酸分の多い緩効性化成肥料を加えます。
庭植えする場合は、よく耕し、苦土石灰をまくなどして酸性度の調整を行います。
温度
ラナンキュラスの球根は、寒さにあたることで花芽を出します。
冬の間、霜に当てないよう注意しながら戸外で管理しましょう。
真冬は防寒する方がよく、寒冷地では室内で管理する方が確実です。
気温が上がる夏の間、球根は休眠します。
ラナンキュラスを育てるときのポイント
選び方
ラナンキュラスは球根か苗で入手します。
球根は、よく乾いていて、カビなどが生えていないものを選びます。
苗は、株がしっかりしていて、葉に元気があるもの、つぼみが沢山ついているものを選びましょう。
つぼみと花の色が異なることがあるので、花色にこだわる場合は、開花している株で確認しましょう。
植え付け
市販のラナンキュラスの球根は完全に乾燥した状態で売られています。
そのまま植えつけると急激に吸水して球根が腐ってしまうことがありますので、植え付け前に吸水作業をしてやる必要があります。
軽く湿らせたバーミキュライトに球根を埋め、一週間冷蔵庫で保管してから、植えつけましょう。
または湿らせたキッチンペーパーで球根をくるみ、ビニール袋に入れて冷蔵庫に一日入れてもよいです。
水に浸し過ぎると球根がカビてしまうので気を付けます。
吸水後、浅く植えつけましょう。
苗を植え付ける場合は、根鉢をくずさないよう気を付けて植えます。
植え付け後、たっぷり水やりをしましょう。
球根の掘り上げ
翌年もラナンキュラスの開花を楽しむためには、球根を堀り上げる必要があります。
植えっぱなしにしておくと球根が腐ることがあるからです。
開花後、葉がすべて枯れたら球根を堀り上げて陰干しし、しっかり乾燥させます。
バーミキュライトで包むなどして、次の植え付けまで冷暗所で乾燥保存します。
近年、品種改良が進み、植えっぱなしでも翌年咲く品種が出てきています。購入時に確認しましょう。(植物の種類「ラックスシリーズ」を参照)
剪定
花が咲いたら、こまめに花がらを摘みましょう。
病気の予防になります。
増やし方
球根を分球して増やすことができます。
5月~6月、球根を堀り上げたら、よく洗って、分球して陰干しします。
その後、植え付けまで冷暗所で保存しましょう。
種で増やすこともできますが、種の場合親株と同じ花が咲かない可能性があります。
同じ花を咲かせたいならば、分球する方法がいいでしょう。
気を付けるべき病気・害虫
病気
灰色かび病が開花期に発生します。
カビが原因の伝染病です。
散った花びらや枯れた葉をこまめに取り除いて予防します。
害虫
アブラムシやハモグリバエに注意しましょう。
ハモグリバエは、3月~5月頃発生します。
葉に、落書きのような白い筋がついていたら、幼虫が筋の先端にいるので、葉の上からつぶします。
殺虫剤・殺菌剤
アブラムシが大量にいる場合は、市販のスプレー剤などを散布して駆除します。