
ジャムやスイーツの材料としてお馴染みのブルーベリー。
比較的丈夫で育てやすく、初心者向けの果樹として人気です。
とれたての実は甘さや酸っぱさが絶妙で、そのおいしさは格別。
鉢植えでも実が収穫できますので、植栽スペースが狭くても挑戦できます。
今回はブルーベリーの苗の選び方から植え方、剪定方法、増やし方まで詳しくご紹介します。
ブルーベリーの基本情報
学名 | Vaccinium corymbosum |
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英名 | blueberry |
その他別名 | ヌマスノキ(沼酢の木、沼酸塊)・アメリカスノキ |
科名 | ツツジ科 |
属名 | スノキ属 |
原産地 | 北アメリカ |
ブルーベリーの特徴
ブルーベリーは北アメリカが原産で、もともとは冷涼な気候の地域で育つ植物です。
しかし、品種改良が進んだ結果、暖地でも育つ品種が生まれ、日本全土で広く栽培することができるようになりました。
ブルーベリーには多種多様な品種があり、日本で一般的に栽培されているものは大まかに「ハイブッシュ系」と「ラビットアイ系」の2つの系統に分けられます。
寒冷地向きの品種と暖地向きの品種があるので、栽培する地域の気候に合った品種を選びます。
確実に果実を収穫するためには、同じ系統の別品種を2本以上植えるようにしましょう。
自分でブルーベリーを育てる最大のメリットは、とれたての果実を味わえることです。
摘みたてのブルーベリーは想像以上のおいしさ。生でそのまま食べる他、ジャムにしたり冷蔵庫や冷凍庫で保存することもできますので、余すことなく味わえます。
順調に育てば、数年で収穫量も増え、1株で数キロの収穫も見込めます。
店頭で売られている生のブルーベリーは価格が高めですから、自宅で沢山収穫できれば家計に嬉しいところです。
この他、果実以外にも春先に咲く可愛らしい花や、秋の紅葉の美しさなど、ブルーベリーには魅力が沢山あります。
自宅のガーデンやベランダに取り入れて、四季折々に変化する姿を楽しみましょう。
ブルーベリーの種類
ブルーベリーには大きく分けて「ハイブッシュ系」「ラビットアイ系」「ローブッシュ系」の3系統があります。
このうち、日本で一般的によく栽培されているのは、「ハイブッシュ系」と「ラビットアイ系」です。
それぞれの特徴と、代表的な品種をご紹介します。
ハイブッシュ系
甘味と酸味のバランスが良い果実をつけます。
収穫期は6月~7月です。
ハイブッシュ系はさらに、冷涼地での栽培に向いたノーザンハイブッシュと暖地での栽培に向いたサザンハイブッシュ系に分けられます。
ノーザンハイブッシュ系:北関東より北の、比較的涼しい地域でよく育ちます。
世界的にはノーザンハイブッシュ系を中心に栽培や品種改良が盛んです。
代表的な品種に「ブルークロップ」「デューク」「ダロウ」「スパルタン」「チャンドラー」があります。
サザンハイブッシュ系:南関東~沖縄にかけての、暖かい地域でも育てられる品種です。
乾燥や寒さにやや弱く、暑さに比較的強い特徴があります。代表的な品種に、「オニール」「シャープブルー」「スター」「ガップトン」があります。
ラビットアイ系
果実が熟す途中にウサギの目のようなピンク色になることから名付けられた系統。
耐寒性がやや弱く、北関東から九州までの比較的暖かい地域で育てやすい品種です。
果実は甘く、沢山の実がつきます。
2種類以上のラビットアイ系ブルーベリーを一緒に育てることで、味の良いブルーベリーを長い期間に渡って収穫することができます。
収穫期は7月中旬~8月下旬くらいまで。
代表的な品種に、「ティフブルー」「パウダーブルー」「オクラッカニー」「ブライトウェル」「オースチン」があります。
ローブッシュ系
北アメリカからカナダにかけて自生するブルーベリーです。
樹高が20~40㎝程度と低めで、小さめの果実がつきます。
夏の暑さが苦手で、日本の気候では育てにくい品種です。
ブルーベリーの栽培・育て方
ブルーベリーは丈夫で育てやすい果樹です。
気候に合った育てやすい品種を選び、日当たりの良い場所で育てましょう。
他の多くの植物と異なり、酸性土壌を好むので、植え付けの際は酸性度を調整した用土を使用します。
ブルーベリーの育て方情報
分類・形態 | 果樹・庭木・花木・低木 |
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草丈・樹高 | 1~3m |
開花の時期 | 4月 |
花色 | 白・ピンク |
耐寒性 | 品種により異なる(弱い~強い) |
耐暑性 | 品種により異なる(弱い~強い) |
特性・用途 | 落葉性 |
栽培難易度 | やさしい |
栽培スケジュール
植え付け | 11月~3月 |
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植え替え | 11月~3月 |
剪定 | 1月~2月 |
肥料 | 3月・5月・8月 |
開花 | 3月中旬~4月 |
収穫 | 6月~9月中旬 |
栽培に必要な準備・環境
日当たり・置き場所
日当たりの良い場所が適しています。
水やり
鉢植えの場合、土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るほどたっぷりと与えます。
地植えの場合は、品種や植えた場所の土壌の質によって多少違いがありますが、植え付け直後を除いて基本的に必要ありません。
ただし、乾燥が続くようなときは、様子を見て水やりします。
肥料
酸性の肥料を好むので、一般の果樹用の肥料ではなく、ブルーベリー専用の肥料を使用します。
植え付けの際に元肥を施します。鉢植えの場合、油粕などの有機質固形肥料を株元に置き肥します。
地植えの場合は、同じ肥料を1株につき1kgを目安に用土に混ぜ合わせて施します。
鉢植え、地植えともに3月、5月、8月下旬に追肥を与えます。
3月は緩効性肥料や油粕などの有機肥料、5月と8月は速効性の化成肥料などを施しましょう。
用土
ブルーベリーは水はけのよい酸性土壌を好みます。
ハイブッシュ系でpH4.5、ラビットアイ系でpH5.0前後の酸性度が適しています。
鉢植え、地植えともに植え付けのための用土を新しく用意しましょう。
すでに酸性度が調整してある市販のブルーベリー用培養土を利用するのが一番簡単です。
自分で配合する場合は、酸度未調整のピートモス6:鹿沼土小粒(または赤玉土小粒)4の割合で混ぜ合わせ、規定量のブルーベリー専用肥料を元肥として加えます。
植え付けの際は、数日前から用土に水をよくもみ込み、吸水させて利用します。
なお、一般の草花用の培養土は弱酸性に調整してあり、ブルーベリーの栽培には向かないことが多いので注意しましょう。
温度
品種によって違いがありますが、ブルーベリーは落葉性の低木で、冬には葉が落ちてしまいます。
暖地においては特に冬越し対策は必要ありません。
冷涼地で、霜が降りたり寒風が吹きつける地域では防寒対策を行います。
鉢の場合は軒下や室内などに取り込みます。
また、降雪で枝が折れることもあるので、必要な場合は支柱をして枝を支えます。
ブルーベリーを育てるときのポイント
選び方
園芸店で苗を購入するときは、根がしっかり張っているもの、樹勢の強い枝が生えているものを選びます。
最近では一年中購入できますが、秋から春にかけての寒い時期に、挿し木した後2年以上経っている、大きな苗(4号ポット~)を購入すると失敗しにくいでしょう。
ブルーベリーは品種によって暖地向き、冷涼地向きがあるので、育てる地域の気候に合った品種を選びます。
関東より北ではノーザンハイブッシュ系、関東より南~九州ではサザンハイブッシュ系かラビットアイ系が適しています。
ブルーベリーの果実を確実に収穫するには、同一系統の2種類以上の品種を植えます。
購入の際に、系統と品種をラベルなどでよく確認して選びましょう。
植え付け・植え替え
11月か3月が植え付け・植え替えの適期です。
用意しておいた穴に浅めに植えつけ、植え付け後はたっぷりと水やりします。
鉢植えの場合、購入した苗より1~2回り大きな鉢に植え替えます。
また、鉢植えで育てていると、根詰まりが起きます。
植え付けの翌年以降は、2~3年に1回のペースでひと回り大きな鉢に植え替える「鉢増し」か、用土を更新し同じ大きさの鉢に植えなおす「鉢替え」を行いましょう。
地植えの場合、寒冷地は寒さで根を傷めるおそれがなくなった3月が植え付けの適期です。
暖地では11月にも行えます。土壌の酸性度を調整し、植えつけたらマルチングを施します。
剪定
12月~3月の休眠期に冬の剪定を行います。
前年に伸びた枝を切り戻して新しい枝を育て、株を充実させましょう。
挿し木してからの年数により、剪定の仕方が変わってきます。
購入する時に何年生の苗か確認しておきましょう。
挿し木してから2年経った2年生の苗を植え付けた場合、最初の冬の剪定は新しく伸びた元気な枝を半分の長さに切り戻し、花芽もすべて切り取ってしまいます。
これにより、花や果実は1シーズンつかず、我慢しなくてはなりませんが、翌年以降の収穫量を増やすことができます。
3~4年生の苗の場合は、花芽を半分残して、枝先のみ切り戻します。
数を絞って果実を充実させます。株元から新しい元気な枝(サッカー)が伸びていたら、半分に切り戻して新しい枝として育てます。
鉢植えでは3~4本の株立ちになるようにサッカーを育てていきます。
5年生以降の苗の場合は、折れたり枯れたりした枝、内側に向かって伸びた枝など不要な枝を切ります。
果実がついた後の枝の先は枯れているので、先端を切ります。
また、樹勢が強く、長く伸びた枝を選んで半分ほどに切り戻し、翌年以降結実する枝を育てます。
ふやし方
ブルーベリーは挿し木で増やすことができます。
3月が適期です。前年に伸びた枝を保存しておき、10㎝程度に切ったら、挿し木用の用土を入れた9㎝のポリポットに挿します。
用土の中央に5㎝の深さで挿しましょう。
その後、半日陰で水切れに注意しながら管理します。順調にいけば、約3か月後には発根します。
このほか、6月下旬~7月上旬に新梢を使って挿し木する方法もあります。
収穫
品種によって少し時期が異なりますが、6月~8月がブルーベリーの収穫期です。
果実の皮が完全に青色になったものを収穫します。
午前中の涼しいうちに収穫し、すぐに食べるか冷蔵庫で保存しましょう。
気を付けるべき病気・害虫
ブルーベリーは他の果樹に比べると病害虫で悩まされることがあまりありませんが、まれに発生することがあるので、普段からよく観察して早めに対策します。
病気
ブルーベリー赤色輪点ウイルス病、灰色かび病に注意する必要があります。
害虫
アブラムシ、カイガラムシ、イラガ、カミキリムシ、コガネムシ、ミノガなどにお気をつけください。
殺虫剤・殺菌剤
害虫は見つけ次第、駆除します。
アブラムシやカイガラムシは古歯ブラシなどを使って除去しましょう。
コガネムシは成虫が葉を食べるほか、産卵した卵が土中でかえり、幼虫が根を食べることがあるので注意が必要です。
病気や害虫を予防するために、日ごろから除草や剪定を行って風通しを良くしましょう。