ひな祭りに飾る桃の花の由来や種類、育て方

春にかわいらしいピンク色で心を和ませてくれる桃の花。
3月3日のひな祭りにも欠かせない花ですね。桃には邪気を払う力があるとして、古来より人々から愛されてきました。

桃には花を観賞するための花桃と実を食用するための実桃があり、花桃は育てやすいため庭木としてよく利用されています。

ここではそんな桃に関する伝説や、花桃の育て方や品種についてご紹介します。

桃の基本情報

学名Prunus persica
英名Peach blossom
科名バラ科
属名モモ属
原産地中国北西部

桃の花の特徴

桃は原産地中国で古くから不老長寿や厄除け、子孫繁栄の縁起物として重宝されてきました。
同じように、日本でも桃は邪気を払う神聖なものとして信仰されていました。

また、桃は多くの実をつけることから多産をイメージし、健やかな女性の象徴となりました。

上記のような理由から、ひな祭りでは病気や災厄をよけ健やかな女性に育ってほしいという願いを込めて桃の花を飾ります。

桃の花言葉

「天下無敵」の花言葉は、古事記でイザナギノミコトが黄泉の国の亡者に桃の実を投げつけ退けたことが由来とされています。

花言葉の「私はあなたのとりこ」は、桃を魅力的な女性になぞらえたものです。

桃の花の名所

日本には甲信越を中心に桃の花の名所がいくつもあり、時期になるとたくさんの観光客でにぎわいます。

花桃で有名なのは長野県阿智村のはなもも街道や花桃の里です。
大正時代に福沢諭吉の娘婿である福井桃介がドイツのミュンヘンで魅了され持ち帰った花桃が周辺に広がり、阿智村の広い範囲が花桃の名所として知られるようになりました。

花桃はほかに、群馬のわたらせ渓谷鉄道神戸駅、埼玉県の花桃の里、奈良県の不退寺などが有名です。

実桃の花で有名なのは山梨県笛吹市の笛吹桃源郷です。市内全域が桃の生産地のため、春になると全域でピンク色の花が見られます。

桃の花の種類

矢口

ピング色の八重咲きで、花が大輪。
切り花によく用いられます。
ひな祭りで飾られるものはこの品種がポピュラーです。

関白

寒白桃とも呼びます。
白色の八重咲きで、花は中輪。

照手紅・白

枝がほうき状に伸びるので場所を取りません。
花は大輪で紅は紅色、白は白色の花です。

源平

1本の木にピンクと白の花が咲きます。
八重咲きです。

照手水蜜

しだれ源平と白鳳(実桃)の交雑品種で、春は花を楽しみ、夏は実を楽しむことができます。
木はあまり大きくならないので庭でも栽培しやすい品種です。

桃の栽培・育て方

桃には花桃と実桃がありますが、実桃は病気や害虫にかかりやすく手間がかかるため家庭で育てるのはおすすめしません。
ここでは育てやすく、きれいな花を楽しめる花桃の育て方についてご紹介します。

桃の育て方情報

分類・形態花木・果樹・高木
草丈・樹高5m~8m
開花の時期3月中旬~4月中旬
花色赤・白・ピンク・複色
耐寒性強い
耐暑性強い
特性・用途落葉性・耐寒性が強い・初心者でも育てやすい
栽培難易度やさしい

栽培スケジュール

植え付け11月~12月・2月~3月
植え替え11月~3月(鉢植えのみ)
剪定3月下旬~5月(花桃)・1月~2月(実桃)
肥料2月~3月・9月
開花3月中旬~4月中旬
収穫7月~8月(実桃)

栽培に必要な準備・環境

鉢植え・地植えどちらでも育てられますが、大きく育つため地植えのほうが無難です。
鉢植えにする場合は剪定をしっかりする必要があります。

必要なもの

鉢植えにする場合は根鉢の2倍ほどの大きさの鉢を用意します。

日当たり・置き場所

日当たり・水はけのよい場所で育てます。
日陰に植えてしまうと枝ばかりが伸び、花が付きにくくなります。

大きく育つので十分なスペースを確保しましょう。

水やり

苗木のうちは乾燥させないよう、こまめに水やりをしましょう。
植え付け後、根が安定すればそれほど水やりは必要ありません。

地植えは7月~9月の高温にな時期に乾燥が続くようなら水やりをしましょう。
鉢植えの場合は土の表面が乾いたらたっぷり水やりをします。日中を避け、早朝か夕方におこないましょう。

肥料

花の前の2月~3月ごろに緩効性肥料か有機肥料を施肥します。
花が咲き終わった後の初夏にもお礼肥をします。

用土

水はけのよい土を好みます。
植え付ける場所を幅、深さとも根鉢の2倍の大きさまで掘り返し、土に堆肥や腐葉土を1/3ほど混ぜ込みましょう。
鉢植えの場合は下に軽石を敷き詰め、水はけをよくします。

温度

開花に適した温度は15℃~25℃です。

桃の花を育てるときのポイント

選び方

根がしっかり張り、幹が太いものを選びましょう。

植え付け

落葉期の11月~12月か2月~3月におこないます。
日当たりのよい場所に根鉢の2倍の大きさの穴を掘り、水はけをよくする堆肥や腐葉土を3割ほど混ぜ込んだ土に植えます。
風で幹が折れることがあるので支柱をしましょう。

剪定

3月下旬から5月ごろ、花が咲き終わったらすぐに剪定をしましょう。
夏に翌年の花芽が付くので、剪定が遅くなると次の花つきが悪くなります。
樹形を整えながら、芽を2、3残して剪定します。木を大きくしたくないときは強めに剪定しましょう。

枝が込み合って風通しが悪いようであれば、花のあとに軽く剪定します。

植え替え

鉢植えの場合のみ、根詰まりを防ぐために2~3年に一度植え替えましょう。

ふやし方

桃は接ぎ木や挿し木で増やしますが、家庭では挿し木で増やすのがおすすめです。
5月~6月が適期です。
枝を10cmほど切り、葉を先端の2~3枚を残して取り除きます。
しっかり水を吸わせてから、市販の挿し木用の土(鹿沼土でも)にさし、日陰で管理します。
水を切らさないようたっぷり水やりをしてください。

気を付けるべき病気・害虫

病気

桃に多い病気は縮葉病です。
若葉に菌が侵入し、赤い火ぶくれのような病斑ができます。
進行すると病斑部分に白カビのようなものが発生したり葉が黒く腐ってきたりします。
春先に気温が低く雨が多い年に発生しやすくなります。

害虫

アブラムシやカイガラムシです。
見つけ次第防除するようにしましょう。

殺虫剤・殺菌剤

縮葉病にはオーソサイド水和剤80、ビスダイセン水和剤が予防によいとされています。

カイガラムシには薬剤が効きづらいので、ブラシなどでこすり落としましょう。
アブラムシはアセフェート含有の殺虫剤が効果的です。