初夏に咲く、豪華で美しい花、シャクヤク(芍薬)。
幾重にも重なる花びらが魅力的で、一輪でも主役級の存在感があります。
今回は、庭植えの花として、また切り花として人気のシャクヤクについてご紹介します。
シャクヤクの基本情報
学名 | Paeonia lactiflora |
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英名 | Chinese peony, Common garden peony |
その他別名 | エビスグサ・貌佳草(カオヨグサ)・ピオニー |
科名 | ボタン科 |
属名 | ボタン属 |
原産地 | 中国東北部~シベリア |
シャクヤクの特徴
「立てば芍薬(シャクヤク)、座れば牡丹(ボタン)、歩けば百合(ユリ)の花」とは女性の美しさを言い表す言葉として有名です。
美人の姿に例えられる通り、シャクヤクはとても美しい花を咲かせ、多くの人を魅了してきました。
シャクヤクの歴史
シャクヤクは中国で古くから栽培されていました。
薬用植物として知られ、漢方薬の材料でもあります。
その後、日本やヨーロッパにも伝わり、観賞用に改良が進められ、色や形の違う園芸品種が数多く生まれました。
日本で改良されたものを「和シャクヤク」、ヨーロッパで改良されたものを「洋シャクヤク」と分類することもあります。
「和シャクヤク」には一重咲きや翁咲き(内側に小さな花びらをぎっしり抱えて咲く)が多く、「洋シャクヤク」には手まり咲き、バラ咲きなど、ゴージャスなものが多くみられ、華やかな香りをもつものも多くあります。
結婚式のウェディングブーケで用いられることが多いのは、花びらが多く、華やかな洋シャクヤクが中心です。
シャクヤクの花言葉
シャクヤクの花言葉には「はじらい」や「はにかみ」など花嫁にぴったりの可愛らしいものがあり、さらに白いシャクヤクの花言葉には「幸せな結婚」があるそうです。
シャクヤクはまさに結婚を祝福する花束に最適な花と言えそうです。
シャクヤクとボタンの違い
シャクヤクは、ボタンと良く似ています。
どちらもボタン科ボタン属の植物ですし、英名のpeonyはシャクヤクとボタンの両方を指すなど、英語圏では区別がされていません。
しかし、シャクヤクとボタンには異なる特徴がいくつもあります。
最も大きな違いは、シャクヤクは草(草本)、ボタンは木(木本)という点です。
シャクヤクは草なので、冬になると地上部が枯れ、根の状態で休眠します(宿根草)。
一方、ボタンは木なので冬の間も枝が残ったままです。
この他にも区別される特徴として、シャクヤクの葉はツヤがあり、全体に丸みがあるのに対し、ボタンはツヤがなくギザギザしていること。
蕾の形が、シャクヤクは丸いのに対し、ボタンは先がとがっていること。
シャクヤクは甘くさわやかな香りがあり、茎が枝分かれせずにまっすぐ上に伸びるのに対し、ボタンは香りがなく、枝分かれして横に広がること、などがあります。
シャクヤクとボタン、機会があればよく観察して見分けてみましょう。
シャクヤクの種類
シャクヤクには沢山の園芸品種があります。
代表的なものをご紹介します。
コーラルチャーム
カップ咲きのシャクヤク。
お椀のように花が開きます。
優しいピンク色が人気です。
プリマ・ベラ
白色の花びらで中心部が黄色。
色のコントラストが印象的な品種です。
サラ・ベルナール
フランスの女優、サラ・ベルナールにちなんで名づけられたシャクヤク。
蕾の姿に気品があります。
ライトピンクの大輪の花には芳香があります。
強健です。
エッジドサーモン
花びらにサーモンピンクの淡いグラデーションがあります。
切り花向きの品種で、アメリカシャクヤク協会のコンテストで金賞を受賞しています。
かぐや姫
薄いピンク色の可愛らしい花を咲かせます。
花は大きく、直径約25㎝ほどです。
滝の粧(たきのよそおい)
優しい薄ピンクの花色。
咲き進むと白く変化します。
八重咲きで、微香があります。
育てやすく、地植えにすれば沢山の花を咲かせます。
楊貴妃
薄黄色の花色。
中国原産種で、古くから日本で愛されてきた品種です。
シャクヤクの栽培・育て方
日当たりと水はけの良い場所で育てます。
初夏に花が咲き、冬に地上部は枯れますが、春になると再び芽が出て茎をのばします。
庭に植えて一度根付けば、毎年花を楽しめます。
病気にならないよう注意して育てましょう。
シャクヤクの育て方情報
分類・形態 | 草花・多年草 |
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草丈・樹高 | 60~120㎝ |
開花の時期 | 5月~6月 |
花色 | 赤・ピンク・白・黄・複色 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 普通 |
特性・用途 | 落葉性・芳香あり |
栽培難易度 | 普通 |
栽培スケジュール
植え付け | 9月~10月 |
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植え替え | 9月~10月 |
肥料 | 3月・6月・9月中旬~10月 |
開花 | 5月~6月 |
栽培に必要な準備・環境
日当たり・置き場所
日当たりが良く、水はけの良い場所が適しています。
半日陰でも育ちます。
葉が大きく茂るので、ある程度広いスペースが必要です。
水やり
鉢植えの場合、土の表面が乾いたら鉢底からあふれるほどたっぷりと与えます。
水切れしないよう注意しましょう。
庭植えの場合、ほとんど必要ありません。
自然に降る雨だけで大丈夫です。
ただし、晴天が続き、ひどく乾燥している場合にはたっぷり与えましょう。
肥料
植え付けの際に元肥を施します。
また、花をしっかり咲かせるため、芽が出る前(早春)、花が咲き終わった後(お礼肥え)、翌年の花芽ができる秋、にそれぞれ化成肥料を施します。
冬に寒肥として有機質の固形肥料を与えてもいいでしょう。
用土
鉢植えの場合、8号以上の大鉢を用意しましょう。
根をしっかり張らせます。土を配合する場合は、赤玉土中粒4:鹿沼土4:腐葉土2などで用意し、混ぜ合わせます。
庭植えの場合、土を掘り起こし、よく耕します。
有機物に富んだ肥沃な土が好ましいので、堆肥や腐葉土などをすき込みましょう。
葉によく日が当たりつつ、地表は影になっているのが理想です。
株元をマルチングするなどして、地温の上昇と乾燥を防ぎましょう。
温度
冬は地上部が枯れ、地中の根だけの状態になりますので、特別な冬越し対策は必要ありません。
夏は、乾燥しないよう気を付けます。
シャクヤクを育てるときのポイント
選び方
園芸店などで苗を購入します。
葉がついている場合は、葉にツヤがあって、色が良いもの、しっかりしている苗を選びます。
病害虫の跡がないかどうか確認しましょう。
植え付け・植え替え
9月~10月が適しています。
日当たりを好みますが、西日が強くあたって乾燥するような場所は避けましょう。
植え付け後、あまり植え替えに向きません。
また、大きく育つので、広いスペースが必要です。
植える場所を最初によく考えましょう。
鉢植えの場合、鉢に根が回ったら、2~3年に1回、秋に一回り大きな鉢に植え替えます。
剪定・切り戻し
1本の茎に複数の蕾がついている状態で育てると花が小さく、咲かないものが出ます。
頂点の大きな蕾だけを残し、他の蕾を摘み取ります。
花が咲き終わった後は、早めに花がらを切り取ります。
病気を予防し、株の消耗を防ぎます。
シャクヤクは冬になると地上部が枯れます。
晩秋に枯れた茎を地面の際で切ります。
増やし方
株分けで増やせます。
9月頃が適期です。
根をなるべく切らないように注意して、株分けします。
分けるとき、一株に3個以上芽が残るようにし、葉は半分ほどに切っておきます。
気を付けるべき病気・害虫
病気
うどんこ病、灰色かび病などに気を付けましょう・
うどんこ病はカビが原因です。
うどん粉をまぶしたように白っぽくなります。
灰色かび病は蕾が被害にあうと茶色くしおれて花が咲きません。
害虫
アブラムシ、ネコブセンチュウ、コウモリガの幼虫、ヨトウムシにご注意ください。
殺虫剤・殺菌剤
灰色かび病を防ぐため、あらかじめ殺菌剤を散布します。
芽が出てから開花までの間、2~3回に分けてベンレート水和剤などを散布します。