
切れ込みの入った花びらが柔らかく、繊細な印象を与える撫子(ナデシコ)。
秋の七草のひとつに数えられ、四季咲きの品種が多く、春と秋を中心に長い期間咲き続けます。
今回は、初心者でも育てやすい撫子(ナデシコ)について、植え方や育て方など、栽培方法を詳しくご紹介します。
撫子の基本情報
学名 | |
---|---|
英名 | Dianthus, Gillyflower |
その他別名 | ナデシコ・ダイアンサス |
科名 | ナデシコ科 |
属名 | ナデシコ属 |
原産地 | ヨーロッパ・北アメリカ・アジア・南アフリカ |
撫子の特徴
古くから日本に自生し、親しまれてきた撫子(ナデシコ)。
近年はサッカー日本女子代表につけられた愛称「なでしこジャパン」でお馴染みの植物です。
「なでしこジャパン」は日本人女性の清らかで凛とした美しさを表した「大和撫子(ヤマトナデシコ)」という言葉に由来してつけられたそうですが、撫子はそのような形容にふさわしい、美しさと逞しさを兼ね備えた植物です。
撫子の仲間、ダイアンサス属は世界に約300種が分布しています。
カーネーションもダイアンサス属の花ですが、一般的にカーネーションを除いたものを総称して「撫子(ナデシコ)」と呼びます。
日本に自生する撫子としてよく知られているのは、カワラナデシコです。
これは秋の七草のひとつに数えられます。
他にも、ヨーロッパを原産としたタツタナデシコ、中国原産のセキチクなど世界各地に多くの品種があり、園芸品種も沢山作られています。
撫子は多くのものが四季咲きで、切り戻すことにより長い間花を楽しむことができます。
花の咲き方や花色は品種によって実に様々ですが、総じて切れ込みの入った花びらをもち、優しげで柔らかい印象を与える草姿をしています。
その一方で、耐寒性が強く、乾燥にも比較的強いという丈夫な性質をもっているので、初心者でも失敗なく育てることができるでしょう。
撫子の種類
撫子の代表的な品種をご紹介します。
テルスター系
四季咲き性の代表品種です。
草丈は低く、セキチクとヒゲナデシコを交配した育てやすい品種になります。
カワラナデシコ
日本の各地に自生している品種です。
花びらに深い切れ込みが入っていて、繊細な印象。秋の七草のひとつに数えられます。
ヒゲナデシコ(アメリカナデシコ、ビジョナデシコ)
ヨーロッパ原産の撫子です。
茎の先端に沢山の花が集まって咲く派手な印象の撫子です。
草丈は30~60㎝で、花色が豊富です。
タツタナデシコ
ヨーロッパ原産の撫子で、蛇の目模様があるのが特徴です。
銀白色の葉が美しい品種です。
セキチク
中国原産の撫子です。
草丈15~30㎝程度です。
花はな
マット状に広がり、こんもりと茂る撫子です。
撫子の栽培・育て方
日当たりと水はけが良い場所で育てます。
比較的乾燥に強く、過湿に弱い特徴があるので、水やりのし過ぎに注意します。
梅雨前に切り戻しをして蒸れを防ぐと良いでしょう。
耐寒性に優れており、特別な冬越し対策は必要ありません。
撫子の育て方情報
分類・形態 | 草花・一年草・多年草(品種による) |
---|---|
草丈・樹高 | 10~60㎝ |
開花の時期 | 4月~8月(品種による) |
花色 | 赤・ピンク・白・黄・複色 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 強い |
特性・用途 | 常緑性・花壇・鉢植え |
栽培難易度 | やさしい |
栽培スケジュール
植え付け | 3月~5月・9月~10月 |
---|---|
植え替え | 3月~5月・9月~10月 |
剪定 | 適宜 |
肥料 | 3月~5月・9月~10月 |
開花 | 4月~8月(品種による) |
栽培に必要な準備・環境
日当たり・置き場所
日当たりが良く、水はけの良い場所、風通しの良い場所が適しています。
比較的乾燥に強いので、傾斜地や石垣の上などでも育てられます。
水やり
鉢植の場合、土の表面が乾いたら、鉢底から流れ出るほどたっぷりと水やりをします。
地植えの場合、植えつけの際はしっかり水やりしますが、根が張った後は基本的に水やりの必要はありません。
ただし、あまり乾燥が続くようなら、様子を見て水やりします。
撫子は過湿を嫌います。
水のやり過ぎには注意しましょう。
また、葉に直接水をかけるのではなく、株元にやるよう意識しましょう。
肥料
追肥した方が花つきが良くなります。
撫子の苗が成長し、開花する時期には月1回のペースで緩効性肥料を置き肥して与えます。
または月3回のペースで液体肥料を与えても良いでしょう。
用土
鉢植の場合、市販の草花用培養土で問題なく育ちます。
配合する際は、赤玉土5:腐葉土2:鹿沼土あるいは山砂3の割合で混ぜ合わせます。
地植えの場合は、植えつけの場所をよく耕し、堆肥、腐葉土などをすき込んでおきます。
植えつけの約2週間前に苦土石灰を混ぜて酸度を調整します。
土を少し盛り上げ、水はけを良くしておくとなお良いでしょう。
温度
耐寒性が強く、特別な冬越し対策は必要ありません。
耐暑性は品種によって若干異なります。
総じて強いですが、夏の暑さや日差しで弱る品種があるので、その場合は半日陰などに移して管理します。
撫子を育てるときのポイント
選び方
撫子の苗を選ぶ際は、花芽が沢山ついているものを選びましょう。
葉の色つやが良く、元気なもの、株元がグラグラしておらず、病害虫の跡がないものが良い苗です。
種まき
撫子は種から育てることも比較的簡単です。
寒冷地は春(4月~6月)、温暖地では秋(9月~10月)が種まきの適期です。
発芽温度は20℃前後、5~7日で発芽します。
鉢かプランターを用意し、種まき用土あるいは赤玉土7:ピートモス3の割合で混ぜた土を入れます。
そこに種をまき、5mmほどの土で薄く覆ったら、たっぷり水やりします。
発芽するまで乾燥させないようにして半日陰で管理します。
発芽後はよく日に当ててやり、水やりを控えめにします。本葉2枚ほどになったら、ポットに植え替えて育てます。
植えつけ
植えつけの適期は春(3月~5月)と秋(9月~10月)です。
種から育てた苗、あるいは購入してきた苗が準備できたら、すぐに根が回ってしまうので早めに植えつけましょう。
ポットの中で根が回っているようなら、根を少しほぐして植えつけます。
水はけの良い土に、浅めに植えつけましょう。
植え替え
鉢植えで育てていると、根がびっしりと生え、根詰まりを起こします。
多年草の品種は1年に1回、秋の開花が終わった後にひと回り大きな鉢に植え替えると良いでしょう。
新しい用土を用意し、古い土を落として植え替えます。
剪定・切り戻し
花が咲き終わったら、こまめに花がら摘みを行います。
草丈の高い品種は、花が咲き終わり次第、順次茎を株元近くで切り取ってしまいましょう。
撫子は過湿を嫌います。
夏場の蒸れ対策として、梅雨時期前に切り戻し作業を行います。
草丈の半分程度の高さになるよう切り戻しましょう。
四季咲きの品種も、梅雨前に短く刈り込み、地際近くから新芽を出させるようにします。
こうすることで、秋の開花期に再び充実した花を咲かせることができるでしょう。
なお、マット状に茂るタイプの品種は切り戻しせず、自然なままに育てます。
ふやし方
撫子はさし芽、株分け、種まきで増やすことができます。
さし芽
春か秋が適期です。
花芽がついていない若く元気な芽を切って、水揚げした後、用土に挿して育てます。
株分け
秋が適期です。
沢山新芽がつき、勢いのある充実した株は株分けで増やすこともできます。
種まき
春か秋にまいて増やすことができます。
前年に咲いた撫子の種から育てると、親株と違う花が咲くこともありますので、市販の種を購入してまいた方が確実です。
気を付けるべき病気・害虫
病気
立ち枯れ病、灰色かび病、さび病に気を付けましょう。
立ち枯れ病は、苗の育成期に発生することがあります。
灰色かび病、さび病は風通しが悪いと発生しやすいので、株間をしっかり取ったり、切り戻しを行うことで予防します。
害虫
アブラムシにご注意ください。
殺虫剤・殺菌剤
暖かい時期にアブラムシが発生することがあります。
オルトラン粒剤など市販の殺虫剤を用いて駆除しましょう。