
睡蓮(スイレン)は水面に浮かぶように淡い色の花を咲かせる美しい水性植物です。
幻想的な姿から水の妖精とも呼ばれています。その美しさから古代エジプトより神聖な花として大切にされてきました。
丸い形で浮かぶ葉と、幾重もの花びらを広げる華やかさが睡蓮の大きな魅力です。
野生の睡蓮は主に白が多いのですが、今は黄色やピンク、赤など色とりどりの花があり種類も豊富にあります。
睡蓮は池などの広い水辺で咲くイメージがありますが、実は自宅でも育てることができます。
自宅で育てるのであれば、日本の気候でも育てやすい温帯睡蓮がおすすめ。
温帯睡蓮であれば、冬越しの必要もなくコツさえつかめば、簡単に増やせます。
大きな鉢に睡蓮と金魚を一緒に育てると美しく風情があり、隠れたブームにもなっています。
熱帯睡蓮の場合、栽培の難易度は高いですが、紫や青などエキゾチックな花の色がとても魅力的です。
そんな幻想的かつ暑い夏の時期に爽やかな花を咲かせる睡蓮の名所や気になる育て方などを特徴やポイントを紹介していきます。
睡蓮(スイレン)の基本情報
学名 | Nymphaea |
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英名 | Egyptian water lily |
その他別名 | タイガー・ロータス |
科名 | スイレン科 |
属名 | スイレン属 |
原産地 | 東南アジア・アフリカ・南米 |
睡蓮(スイレン)の特徴
睡蓮は世界の亜熱帯や熱帯地域に生息する多年草の水生植物です。温帯睡蓮と熱帯睡蓮の2種類があります。
葉柄は長く水底に続いていて、葉の形は円形や楕円形の形をしています。花は水面に浮かぶように咲きます。
また睡蓮と言えばフランスの画家のモネが思い浮かぶと思います。
モネも睡蓮に魅了された一人で睡蓮の描かれた作品をシリーズを通して多く残しています。
睡蓮の花言葉に信仰や滅亡など、宗教的な意味合いのものが選ばれているのは古来からエジプトで大切にされてきた花であることがうかがえます。
睡蓮(スイレン)の名所
全国に睡蓮の名所は多くありますが、いくつかご紹介します。
蛇ノ鼻御殿【福島県】
国登録有形文化財や福島近代和風建物指定された建造物がある敷地内の庭園の池には一面の睡蓮の花が咲き誇っています。
スイレン(水元公園)【東京都】
睡蓮池に色とりどりの睡蓮が咲き誇るのが魅力です。
モネの池【岐阜県】
その名の通りモネの絵の中に入ったような睡蓮と水のコントラストが美しい池です。
色とりどりの鯉も泳いでおり、写真に撮るとまさにモネの絵のようです。
金剛證寺【三重県】
朝熊山の山頂にある空海ゆかりの古刹。
敷地内の睡蓮が多く咲く連間の池と真紅の連珠橋の組み合わせがとても美しいお寺です。
睡蓮と蓮の違い
睡蓮は、お釈迦様と一緒に描かれている蓮の葉と似ています。
蓮の花は水面から伸びた茎の先に花をつけ、花の大きさも蓮の花の方が大きいことが特徴です。
睡蓮と蓮の見分け方は葉の特徴、花の形状の違いがあげられます。
葉の違い
蓮の葉には強い撥水性があり、雨粒や水がかかると水玉ができます。
対して睡蓮は葉の全体が濡れたようになるのが特徴です。
花の違い
睡蓮の花が水面に乗っかるように咲くのに対して、蓮は茎をすっと伸ばしてその先に花をつけます。
花が終わった後にハチの巣のような実をつけるのも蓮の花の特徴です。
睡蓮という名前の漢字は、その花が夕方になると眠るように閉じてしまうように見えることからつけられました。
こちらも睡蓮と蓮を見分ける時のポイントにしてみてください。
睡蓮の別名
睡蓮の別名の羊草は羊の刻(午後2時前後)に花を開くことからつけられました。
現在、主流となっている園芸品種の睡蓮は朝から夕方まで花を咲かせているものが多いです。
アフリカや東南アジアが原産の熱帯睡蓮には昼咲きと夜咲きがあるのも大きな特徴です。
睡蓮(スイレン)の種類
睡蓮(スイレン)は熱帯性睡蓮と温帯性睡蓮に分かれます。それぞれの特徴を解説していきます。
熱帯性睡蓮
熱帯性睡蓮は、花茎を水面より伸ばして大きい花を咲かせます。色も温帯性スイレンにはない青や紫があり鮮やかです。
花は朝開花して、夕方まで咲き続けます。種類によっては昼咲きや夜先もありますが開花時期も長く7月~10月まで咲き続けるのが特徴です。
耐寒性が低いため水温が15℃を切ると生育が衰えます。品種は熱帯性睡蓮の方が豊富ですが、日本で育てるのは難易度が高めです。
熱帯性睡蓮の代表的な品種を確認していきましょう。
シャロンクワン 紫色の八重の花弁が特徴的な珍しい品種です。ブルーカペンシス
ブルーカペンシス
薄い紫の花弁と、中心の花芯が豪華なのが特徴の品種です。
温帯性睡蓮
花茎は短く水面の近くに花を咲かせます。主にヨーロッパが原産の西洋睡蓮を品種改良したもので、耐寒性に強い多年草の水生植物です。
日本の気候にも良く合うので、自宅の鉢などでも比較的容易に栽培できます。
温帯性睡蓮の代表的な品種は以下の通りです。
ヒツジグサ
最も一般的な白い花を咲かせる睡蓮の品種です。
日本で昔からある睡蓮はこのヒツジグサだと言われています。花弁の数はあまり多くなく、一重の印象を感じさせます。
ダーウィン
淡いピンク色の花弁が真ん中に向かうにつれて、濃くなっていくのが人気の品種です。
花弁の数も多く、豪華な花を咲かせます。
パープルファンタジー
紫色のとがった花弁が特徴です。
花弁の数も多く見栄えがある花を咲かせます。
睡蓮(スイレン)の栽培・育て方
睡蓮(スイレン)は水生植物なので、育てる際には水を貯める睡蓮鉢が必要です。
苗を大きな鉢や水槽などに沈めて栽培をします。
睡蓮栽培はハードルが高く感じますが、日本の気候に合った品種を選べば初心者でもチャレンジできます。
園芸初心者の場合は、温帯性睡蓮から育てるのが良いかと思います。
日当たりの良い場所で管理をすると良いでしょう。
慣れないうちは水替えや鉢の用意など大変かと思いますが、金魚やメダカを入れて育てると、睡蓮の良さを2倍楽しむことができますよ。
睡蓮(スイレン)の育て方情報
分類・形態 | 水生植物・多年草 |
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開花の時期 | 5月中旬から10月 |
花色 | 白・赤・ピンク・黄色・蒼・紫 |
耐寒性 | 強い※品種によって弱い |
耐暑性 | 普通 |
特性・用途 | 開花期が長い・落葉性 |
栽培難易度 | 普通※品種によって難しい |
栽培スケジュール
植え付け | 3月~7月 |
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植え替え | 3月~7月 |
肥料 | 6月~7月・9月~10月上旬 |
開花 | 5月~10月 |
収穫 | 5月~10月 |
睡蓮(スイレン)の栽培に必要な準備・環境
大きな鉢が必要であることと、日差しが当たり温かく、元肥をしっかり最初にあげることがポイントです。
日当たり・置き場所
睡蓮を元気に育て、花を咲かせるためには日差しが必要です。
睡蓮鉢を動かして睡蓮の根元にまで日が当たる場所で管理するのがおすすめです。
水やり
睡蓮鉢には30㎝程度の深さの水を貯めるようにしましょう。
頻繁に水やりをする必要はありませんが、水切れには注意する必要があります。夏場や開花時期は水位の確認を小まめに行いましょう。
水が汚れると虫が発生してしまうので、水が濁ったら新しい水に入れ替えましょう。
肥料
睡蓮は肥料を比較的よく吸収します。植え付けをする際に多めに肥料をあげましょう。
植え付け時には、土の中に緩効性の化成肥料を元肥として混ぜ込んでおきます。
3週間ほどしたら再度、緩効性の肥料を土に埋め込んでおくと良いですね。
花付きが悪くなってきたときにも、肥料を与えると良いのですが、肥料のあげすぎは害虫の原因にもなるのでご注意ください。
用土
睡蓮は苗が常に水中に沈んでおくように育てます。そのため土は粘土質の土がおすすめです。
市販の水生植物専用土や荒木田土を準備しましょう。
自分で培養土を配合する場合は、黒土や赤玉土、田土などの粘着性の高いものを用います。
冬越し
温帯睡蓮は水面が凍る程度の寒さでしたら、屋外で冬越しが可能です。
株が凍らないように、深めの水位で冬越ししましょう。
睡蓮(スイレン)を育てるときのポイント
植え付け
底に穴が開いてるような素焼き鉢や植木鉢に、水生植物用土や赤玉土を入れ肥料を混ぜ込みます。
鉢は7号以上の大きさがおすすめです。植え付け時期は4月から5月が良いでしょう。
粘土性の土を鉢の3分の1程度入れたら、苗をあまり崩さずに乗せましょう。
その後は株元が隠れないように注意しながら残りの土をかぶせます。大きめの睡蓮鉢に植え付けた鉢を入れてから、水を注ぎこみます。
睡蓮を植えた鉢から、10cm~20cmを目安に水を入れて管理します。
睡蓮の根詰まりを予防するためにも、1年毎に新しい用土に取り換えましょう。
増やし方
睡蓮は大きくなると根が詰まってしまうので、数年に1回は植え替えをします。
その際に、睡蓮の苗を掘り上げて分割すれば睡蓮を増やせます。
根茎という根のかたまりを傷つけないように、余分な根をハサミで切り落として芽ごとに分けていきましょう。
分けた苗はそれぞれ鉢に植えこみます。他にも3月下旬から4月下旬に伸びた根茎を長さ10㎝ほど切り取って別の鉢に同様に植え付けても増やせます。
剪定
枯れ葉取り
黄色くなった葉の根元から取り除きます。
葉が重なったり多すぎる場合も古い葉から取り除きましょう。古い葉は水が枯れる原因となります。
花がら摘み
咲き終わった花は閉じてうなだれます。うなだれたら花茎ごと付根から切り取りましょう。
つぼみは切り取らないように、必ずうなだれている花だけを切り取るように注意してください。
熱帯睡蓮を育てる時の注意点
熱帯睡蓮の生育に適した温度は25℃以上です。なるべく暖かい場所で管理しましょう。
温帯睡蓮と違い、冬場に外で冬越しすることはできません。
霜が降りるくらいになったら発泡スチロールの箱などにいれて保温しながら、温室や室内などに移動させて管理します。
4月になったら外に出して日に当てます。
気を付けるべき病気・害虫
病気
灰色カビ病
葉や花の変色や灰色のカビが発生して、株を枯らしてしまいます。
枯れた葉や花を摘み取り、風通しを良くすることで対処しましょう。
害虫
ボウフラ
ボウフラはカの幼体で水の中で育ちます。
害虫ではありませんが、睡蓮は水の中で育てるので注意が必要です。
水替えを頻繁に行う、金魚などを飼うと予防できます。
アブラムシ
アブラムシが葉や花茎につくこともあるので見つけたら市販のスプレー剤で対処します。
金魚やメダカを飼っている場合は、殺虫剤をまくときに別の容器に移しておくことを忘れないようにしましょう
ヨトウムシ
葉がかじられていたらすぐ取り除きましょう。
殺虫剤・殺菌剤
灰色カビ病は、枯れた葉や花を除去した上で市販の殺菌剤を散布します。
アブラムシがついた場所には、市販のスプレー剤を散布して対処しましょう。
ボウフラに関しては、水にメダカなどを飼うと予防できます。
ボウフラ対策でメダカ等を飼育するときには、アブラムシの殺虫剤で魚毒性がないものをご使用ください。