サクラソウは日本や東アジアの一部に自生する山野草です。
山野草というと育て方が難しそうなイメージがありますが、病気にかかりにくく比較的育てやすい草花です。
園芸植物としての歴史は長く、江戸時代から栽培されていたという記録が残っています。
古くから日本人に愛されてきた可憐なサクラソウについて、種類や育て方をご紹介します。
サクラソウの基本情報
学名 | Primula sieboldii |
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英名 | Siebold primrose |
科名 | サクラソウ科 |
属名 | サクラソウ属 |
原産地 | 日本列島・朝鮮半島~中国東北部 |
サクラソウの特徴
サクラソウは山地の湿り気のある草原や河川敷などに自生する多年草です。
江戸時代から栽培・改良をされてきた草花で、現在では300超の品種が作られています。
その歴史から伝統園芸植物とされ、保存や継承がすすめられている植物のひとつです。
現在でも愛好家が多く、各所で園芸展が開催されています。
残念なことに現在では野生のサクラソウは減りつつあり、天然記念物に指定されている自生地もあります。
有名な自生地を持つ大阪府と埼玉県ではサクラソウを府の花、県の花として定めています。
プリムラなどの西洋サクラソウと区別してニホンサクラソウとも呼ばれます。
小さく可憐な花は開花期が短く、はかないことから花言葉の「初恋」の由来となっています。
宿根草のため夏に落葉しますが、根は枯れずに春にふたたび発芽します。
サクラソウの種類
サクラソウには現在、300ほどの園芸品種があるといわれます。
約300種もありますが花色は基本の白、ピンク、紫で、花弁の形で変化を付けています。
特に人気の品種をご紹介します。
南京小桜
濃いピンク色に白のふち取りが印象的な品種です。
江戸時代、享保年間に作出された古いものです。
蜻蛉(とんぼ)
花弁に細かく切れ込みが入った姿がとんぼの羽のようでこの名が付きました。
白とピンクの花色があり、白蜻蛉、赤蜻蛉と呼ばれます。
鬼ごっこ
濃いピンク色の八重咲きのサクラソウです。
八重咲きは環境や株の強さに左右されやすく、株が弱っていると花が一重になってしまうこともあり、栽培の難易度は高めです。
ほかにも、名前は違いますが人気の山野草であるクリンソウやユキワリソウもサクラソウと同じサクラソウ科サクラソウ属の仲間です。
サクラソウの栽培・育て方
サクラソウは日当たりを好む反面、暑さに少々弱い性質があります。
地植えでも育てられますが季節ごとに移動できる鉢植えのほうが管理しやすいです。
初夏以降、花が終わると葉が枯れて落ちてしまいますが、株は枯れていません。
引き続き水やりをしてください。
湿り気のある土を好むので乾燥に注意しましょう。
サクラソウの育て方情報
分類・形態 | 草花・山野草・多年草(宿根草) |
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草丈・樹高 | 15~20cm |
開花の時期 | 4月~5月 |
花色 | 白・ピンク・紫・複色 |
耐寒性 | 強い |
耐暑性 | 普通 |
特性・用途 | 鉢植え・地植え・落葉性・寒さに強い・病気にかかりにくい |
栽培難易度 | 普通 |
栽培スケジュール
植え付け | 10月~2月 |
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植え替え | 10月~2月 |
剪定 | なし(花がらは摘む) |
肥料 | 植え替え時の3月~4月 |
開花 | 4月~5月 |
栽培に必要な準備・環境
日当たり・置き場所
基本的には日当たりを好みますが、暑さに強くないので夏の直射日光に注意が必要です。
花の咲く春は日当たりのよい場所に置き、休眠中の夏は明るい日陰で風通しのよいところに置きましょう。
9月になったら再度日当たりのよいところに移動します。
地植えの場合は落葉樹の下が適しています。
水やり
乾燥に弱いので、土の表面が乾いてきたら間を置かずにたっぷりあげるようにしましょう。
花のあと、夏に休眠期に入るため葉が枯れることが多いですが、株自体は枯れていません。
水を切らさないようにしましょう。
肥料
植え替えをするときに緩効性肥料を入れます。
開花期には月に1~2回、液体肥料を薄めて施肥します。
肥料を与えすぎると葉ばかりが茂り、花が付きにくい傾向にあります。
用土
小粒の赤玉土や鹿沼土、軽石を混ぜた水はけのよい用土を使用します。
乾きすぎてしまうようなら腐葉土を足して調整しましょう。
温度
サクラソウの栽培適温は15℃~20℃、発芽温度も15℃~20℃です。
サクラソウを育てるときのポイント
選び方
根がしっかりしていて枯れた葉のない、葉艶の良いものがおすすめです。
花芽の多いものを選びましょう。
切り戻し
花がある程度咲き終わったら、花茎を根元から切り落としましょう。
種ができるまで花茎を残しておくと株が弱ってしまうので注意が必要です。
増し土
花茎を切り戻したあと、株の根元に小さなピンク色の新しい株が発生し始めます。
乾燥させないため、新しい株が隠れる程度に土をかぶせます。
植え替え・鉢替え
鉢植えの場合は毎年、地植えは3年に1回程度、10月~2月に植え替えをおこないます。
手順は以下の通りです。
- 鉢から株を取り出し丁寧に根鉢を崩し、黒くなった古い根茎をきれいに取り除く。
- 新しい株がいくつかできているので、根を傷めないようにひとつずつに分ける。
- 緩効性の肥料を混ぜた水はけのよい用土に1,2株ごとに植え付ける。
このとき、鉢の側面に根が付かないよう注意する。 - たっぷり水やりをし、日当たりのよい場所に置く。
急激な気温の低下に備えて防霜シートやコモで保温する。
ふやし方
園芸品種のサクラソウのふやし方は、株分け(芽分けともいう)と種まきがおすすめです。
株分け
植え替えの項で紹介したとおり、新しくできた株を植え替えてふやす方法です。
種まき
種が取れたら、そのまま撒いてしまうと翌年の春に発芽します。
こぼれ種からも発芽します。
気を付けるべき病気・害虫
病気は特にありません。
害虫はアブラムシ、ヨトウムシ、ネコブセンチュウなどです。
ネコブセンチュウは植物の根に寄生する寄生虫で、植物の成長を鈍らせます。
発生してしまったら寄生部位を取り除き、新しい用土と鉢に植え替えます。
殺虫剤・殺菌剤
アセフェート系の殺虫剤はアブラムシ、ヨトウムシ両方に効果があります。