
食虫植物に詳しくない人でも「ハエトリグサ」の名前を耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。
虫を食べるなんて、とちょっと不気味なイメージを持っている方も多いかもしれません。
しかしハエトリグサは意外に繊細な植物で、上手に育てると可憐な白い花を咲かせます。
興味がわいた方は、ぜひ記事を読んでハエトリグサについて知ってみてください。
ハエトリソウの基本情報
学名 | Dionaea muscipula |
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英名 | Venus Flytrap |
その他別名 | ハエトリソウ・ハエジゴク・ディオネア |
科名 | モウセンゴケ科 |
属名 | ハエトリソウ属 |
原産地 | 北米 |
ハエトリソウの特徴
食虫植物にはたくさんの種類がありますが、その多くが落とし穴や粘液に虫が捕まるのを動かず待っているタイプです。
ハエトリグサは動いて虫を捕まえる、とても珍しい植物なのです。
ハエトリグサには「捕虫葉」と呼ばれる二枚貝のような形をした葉があり、それをぱたっと閉じるようにして虫を捕まえます。
葉の中に虫がいることを知覚するのは「感覚毛」で、よく見ると捕虫用の内側に小さなとげのようなものが3~4本生えています。
葉の内側に虫が入って2本以上の感覚毛に同時に触れると素早く葉が閉じ、虫を捕まえます。
意外ですが、ハエトリソウをはじめとする食虫植物は虫を食べないと枯れてしまうわけではありません。
光合成で作る養分だけでも生存には問題なく、虫は肥料のような扱いです。
ハエトリソウの種類
ハエトリグサは大きく分けると「ロゼットタイプ」「エレクタタイプ」の2種類に分かれます。
ロゼットタイプは葉が中止から放射状に地面を張って広がるタイプです。
いっぽうエレクタタイプは、葉が斜めに立ち上がり地面から離れて広がります(冬の休眠期はロゼットタイプのように地面に這います)。
マスシプラ・オールドタイプ
ロゼットタイプの代表品種です。
原種に非常に近く、葉は鮮やかな緑色をしています。
ホームセンターなどで売られているのはほとんどこの品種です。
シャークティース
捕虫葉のふちにあるとげ状の突起の幅が広く、とげというよりはギザギザしています。
そのユーモラスな捕虫葉がサメの口のように見えることから名前がつきました。
マスシプラ・レッドドラゴン
赤い竜とも呼ばれています。
形状はオールドタイプと同じですが、株全体が赤い色をしています。
ハエトリソウの栽培・育て方
涼しい湿地に自生する植物なので、真夏の直射日光に当たらないようにする必要があります。
カビが繁殖しないよう風通しのよいところで管理しましょう。
繊細な植物なのでいじりすぎないよう注意しましょう。
葉が開閉する様子は面白いですが、触って開閉させすぎると枯れてしまいます。
また虫を無理やり与えても枯れる原因になることがあります。
ハエトリソウの育て方情報
分類・形態 | 多年草・観賞植物・食虫植物 |
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草丈・樹高 | 10cm~30cm |
開花の時期 | 5月~7月 |
花色 | 白 |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | やや弱い |
特性・用途 | 食虫植物・落葉性 |
栽培難易度 | 普通 |
栽培スケジュール
植え付け | 12月~2月 |
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植え替え | 12月~2月 |
開花 | 5月~7月 |
栽培に必要な準備・環境
日当たり・置き場所
湿地帯に自生する植物なので、湿り気のある環境を好みます。
日当たりを好みますが暑さに弱いので、夏場の直射日光は避けましょう。
秋から春は日当たりのよい場所で管理します。
鉢植えにして移動できるようにしておくと管理しやすいです。
水やり
常に湿らせておく必要があります。
腰水栽培をすると水切れの心配がなくおすすめです。
腰水栽培とは鉢よりも一回り大きいよう気に水を張り、そこに鉢を入れ底面から吸水させる方法です。
夏場は水の温度が上がりやすいので、ぬるくなった水を夕方交換し夜間は涼しく保つようにしてあげましょう。
肥料
肥沃な土を好まないので、肥料は必要ありません。
食虫植物ですが、虫を人為的に与える必要もありません。
用土
水持ちのよい土を使用します。
水苔で根を包むようにするか、小粒の赤玉土、鹿沼土、ピートモスを同量ずつ配合した土に植え付けます。
温度
生育温度は18℃~25℃です。
注意するべきなのは冬の温度管理です。
ハエトリグサは気温が5℃以下になると休眠します。
室内管理などでずっと5℃を超えた状態でいると休眠ができず、生育が鈍ります。
しっかり休眠させるために0℃~5℃の温度帯で管理しましょう。
ハエトリソウを育てるときのポイント
選び方
葉艶がよく、緑色が鮮やかなものを選びましょう。
葉が黒っぽいものは株が弱っている可能性があるので避けたほうがよいです。
植え付け・植え替え
12月~2月ごろの休眠期におこないます。
水苔か水もちのよい用土(赤玉土小粒:鹿沼土:ピートモス=1:1:1)に植え付け、水をたっぷり含ませましょう。
水苔は劣化が早いので、毎年植え替えて新しいものに替えましょう。
切り戻し
5月~7月ごろに花が付きますが、種を実らせると株の勢いが弱ってしまいます。
種を取らない場合は咲ききったら花の根元から切り戻してしまいましょう。
ふやし方
種まきと株分けでふやせます。
しかし種から育てるのは非常に時間がかかり、難易度も高いので株分けがおすすめです。
冬に植え替えする際、根を傷つけないよう新しい株をそっと分け別の鉢に植え付けます。
触りすぎに注意
感覚毛を触られると葉を閉じる様子は興味深く触れてみたくなりますが、やめておきましょう。
葉を閉じる行為は消耗が激しく、いたずらに触りすぎると葉が黒くなり枯れてしまいます。
5回ほど開閉しただけで枯れてしまうといわれます。
気を付けるべき病気・害虫
暖かくなってくると炭疽病にかかることがあります。
炭疽病はカビが原因で葉に黒い斑点ができ、徐々に広がっていきます。
見つけたら黒くなった葉を切り落とし、早めに薬剤を散布します。
風通しが悪いとアブラムシがつくこともあります。
殺虫剤・殺菌剤
炭疽病にはTPN、マンゼブ等がおすすめです。
アブラムシにはアセフェート等が効果的です。