夏に咲く鮮やかな夾竹桃(キョウチクトウ)の育て方

暑い夏に、鮮やかで美しい花を咲かせる夾竹桃(キョウチクトウ)。インドが原産の花木です。

とても丈夫な性質をもち、害虫も比較的つきにくい園芸初心者でも育てやすい植物です。

1年に1mも生長し、大気汚染にも強いことから広い地域で庭木や街路樹として植えられています。

美しく強い一方で、夾竹桃は葉や枝など樹木全体にオレアンドリンという成分の毒があることでも知られています。

庭木や街路樹としては問題ありませんが、万が一口に入れてしまうと中毒症状を起こします。

樹液を触ったり口に入れたりしないように注意しましょう。今回は、取り扱いの注意点を含め、夾竹桃の植え方・育て方についてご紹介します。

夾竹桃(キョウチクトウ)の基本情報

学名Nerium oleander
英名oleander
その他別名キョウチクトウ
科名キョウチクトウ科
属名キョウチクトウ属
原産地インド・中近東

夾竹桃(キョウチクトウ)の特徴

夾竹桃(キョウチクトウ)は名前の通り、桃のように美しい花、竹のような細長い形の葉を持っています。

夾竹桃は、インドから中国を経由して18世紀頃に日本に来たと考えられています。

夾竹桃(キョウチクトウ)の花の特徴

夾竹桃の花は、4㎝程度の筒状で、5枚に分かれた花びらが、少しねじれたプロペラのような形をしていています。

芳香があり、強い日差しと澄んだ青空にぴったりの華やかさをもっています。

ピンクや白の一重咲きが多いですが、八重咲きや葉に斑が入ったものもあります。暑い夏の間に次々と咲くので、長い期間楽しむことができます。

夾竹桃の葉の特徴

夾竹桃の葉は常緑性のため一年中青々と茂り、暑さや乾燥によく耐えます。

大気汚染など公害にも強いので、公園や市街地の植栽のみならず高速道路沿いや工場地帯の緑化植物としても植えられます。

夾竹桃の毒性

身近な所で目にする夾竹桃ですが、毒を持っているので、注意が必要です。

夾竹桃の毒は、花、葉、枝、根、果実に至るまで、樹木全体にあります。

その毒性は根を張っている土や枝を焼いた煙にまで及びます。

安易に樹液に直接触れる、間違って口に入れることがないよう気をつけなければなりません。

庭木にする場合、子どもやペットがいる時は特に注意しましょう。

夾竹桃(キョウチクトウ)の花言葉

夾竹桃は、その毒性から「用心」「注意」「油断大敵」「危険な愛」と言った花言葉がつけられています。

こんな怖い言葉がつけられていますが、日本では広い地域で街路樹や庭木として愛されています。

夾竹桃(キョウチクトウ)は広島市の花

夾竹桃は、広島市の花としても知られています。

原子爆弾が落とされた広島は、少なくとも75年は草木が生えないと言われていました。

それほどの悲惨な状況だった中、夾竹桃(キョウチクトウ)は広島の地にどの草木よりも先に咲いたそうです。

焼け野原になった大地に咲く、逞しい姿が人々に希望の光を与え、復興のシンボルとなったそうです。

その力強い生命力から広島市は、夾竹桃を市の花とする事を決めました。ちょうど、平和記念日の8月6日頃にたくさんの花を付け、広島の街を美しく飾っています。

夾竹桃がいかに強健な植物であるか、うかがえるエピソードです。

夾竹桃(キョウチクトウ)の種類

現在は品種改良が行われ、日本独自の品種もあります。

花びらの形は丸みを帯びているものと細長い物、フリルがあるものがあり、香りも強いものから弱いものまであります。

フイリキョウチクトウ

葉は黄色の斑入り。濃いピンクの花と合わさると、華やかな印象です。

セイヨウキョウチクトウ

花の色は白~桃色、橙色などです。地中海沿岸地方が原産の夾竹桃。芳香が少ないとされます。

基本の夾竹桃と同じく、毒性があります。

キバナキョウチクトウ

花の色が黄色の夾竹桃です。毒性があります。

ヤエキョウチクトウ

日本の代表品種で、八重咲の大きな花が咲きます。

シロバナキョウチクトウ

一重咲の白い花を咲かせる品種です。

キョウチクトウ ダブルイエロー

八重咲の花が咲く美しい品種です。

キョウチクトウ ミセスローディング

八重咲の淡いピンク色の花を咲かせます。

オキナワ キョウチクトウ

白い花を咲かせ、沖縄県の海岸地域に生育しています。

夾竹桃(キョウチクトウ)の栽培・育て方

夾竹桃(キョウチクトウ)は非常に丈夫な性質をもっているので、育てるのにあまり手がかかりません。

繁殖力が旺盛なので、適宜剪定が必要です。花、葉、枝、根に至るまで、樹木全体に毒があるので取り扱いに注意します。

植え付け時は剪定時は特に、樹液に直接触れないよう気を付けましょう。

樹液に触れないように園芸用手袋、ゴーグルやマスクをつけて出来るだけ皮膚がカバーされるようにして作業してください。

夾竹桃は通常、苗から育てます。鉢植えでも地植えでも育ちますが、庭木として地植えにする方が大きく育ちます。

夾竹桃(キョウチクトウ)の育て方情報

分類・形態庭木・花木・中高木
草丈・樹高3~6m
開花の時期6月下旬~8月
花色ピンク・白・赤・オレンジ
耐寒性普通
耐暑性強い
特性・用途常緑性・開花期が長い・公園や市街地の緑化向き
栽培難易度やさしい

栽培スケジュール

植え付け4月~6月・9月
植え替え4月~6月・9月
剪定1月~3月・9月~12月
肥料2月
開花6月下旬~8月
収穫特になし

夾竹桃(キョウチクトウ)の栽培に必要な準備・環境

日当たり・置き場所

温暖な地域が原産の花木なので、日当たりの良い場所を好みます。日光不足になると、葉が落ちてしまいます。

また、枝がよくのびるので、日当たりと風通しを良くするためにも、剪定は必要です。

水やり

基本的には、雨のみで特別な水やりは必要ありません。

しかし、まだ植えたばかりのものは土の表面が乾いたら、たっぷりと水をあげてください。

また、真夏の暑い時期は朝か夕方にたっぷりと水を与えてください。鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら、たっぷりと水を与えます。

肥料

2月頃、寒肥(元肥)を与えます。冬に与える肥料には、新芽や花を増やす力、根や木を健康にするような目的があります。

冬は株が休眠しているので、ゆっくりと効く緩効性肥料や有機肥料を株元の周辺に施します。

用土

あまり用土は選びませんが、水はけと保水性のどちらも備え持った土を好みます。

植える場所が粘土質などで水はけが悪い場合は、盛り土をして高植えにするなどします。

高植えとは、苗を植える時に深く穴を掘らず、覆った土が地面よりも盛り上がる状態です。

腐葉土

鉢植えの場合は、赤玉土7:腐葉土3の割合で混ぜたものなどがおすすめです。

水はけがよく、有機物が多めで保水力が高い土を用意しましょう。

温度

基本的には温かい気温を好みます。暑さには強く、しっかりと根付けば寒さにも比較的耐えられます。

東北南部より南の地域であれば、問題なく冬越しします。

夾竹桃(キョウチクトウ)を育てるときのポイント

選び方

苗は葉が元気なものを選びます。病害虫のついたもの、その食害のあとがあるようなものは避けます。

毒性があるので、植える場所を考慮しましょう。

植え付け・植え替え

4月~6月・9月頃が適しています。元来、温暖な地域が原産の樹木なので植え付け後にある程度温度が下がらない時期を選びましょう。

鉢植え、地植え、いずれの場合も植え付けや植え替えの際に有機質肥料か緩効性化成肥料を元肥として与えます。

植え替え手順は以下の通りです。

  1. 苗の2~3倍の大きさの穴を堀り、根を傷めないように苗を置きます。
  2. 周りに土を被せ、しっかりと立てます。
  3. さらに支柱を立てて、根付くまで固定しましょう。

剪定

花が咲き終わる9月頃から翌年3月までの間で、必要に応じて行います。

寒い時期はなるべく避けて、秋頃か春が始まる前に作業をすることをおすすすめします。

風通しをよくし樹形を整えるために、混みあった枝や伸びすぎた枝、他の木に触れている枝を切り落としましょう。枝は切る際は、枝の根本から切ります。

樹液には毒があります。剪定後の枝の処理をペットが口に入れないようにしましょう。

剪定の際は必ず手袋をして、直接手に触れないように気を付けましょう。また切り取った枝を燃やすと、その煙にまで毒があります。

通常の草木ゴミとして出せない場合がありますので、各自治体に問い合わせましょう。剪定作業が自分で難しい場合は、専門の業者に相談すると良いでしょう。

増やし方

取り木、株分けか挿し木で増やすことが可能です。6月から7月の間が適した時期です。

取り木

  1. 枝の樹皮の周りを清潔なナイフやカッターで3cm位の幅になるようにグルっと切れ目を入れます。
  2. 3cmの切れ目に沿って樹皮をむいたら、水で湿らせた水苔をあてて、そのうえからラップやビニールを巻きます。
  3. ラップの上下をビニールひもで結んで根が出るのを待ちます。
    水苔は常に湿っているように、必要に応じて水苔に水を与えてください。

株分け

5月~6月に株立ちの根の周辺を堀り上げて、ノコギリなどで切り離します。

挿し木

6月~7月に行いましょう。

  1. 挿し木にしたい枝を切りとり、1~2時間ほど水にさしておきます。
  2. メネデールやルートン等の発根促進剤を切り口に塗ると、発根しやすくなります。
  3. 清潔な土に挿します。
    種まき用、挿し木用の用土を使うとよいでしょう。
    バーミキュライトやパーライト、鹿沼土も挿し木用としてつかえます。

圧条法

幹の根本から出てきた枝をまげて、土の中に埋めます。枝に盛り土をして、しっかりと覆います。

2ヶ月前後で根が出てくるので、切り離して別の場所に植え付けましょう。

気を付けるべき病気・害虫

夾竹桃は害虫の被害にあいにくいですが、稀に以下の病害虫の被害にあう場合があります。

病気

炭そ病になると、葉に黒っぽい病斑が出ます。4月頃から出はじめ、梅雨入り以降増えることが多いです。

害虫

キョウチクトウアブラムシに注意しましょう。

橙色のアブラムシで、4月頃から発生する場合があります。枝先が吸汁害にあうと、花が咲かなくなります。

また、甘い蜜状の排泄物が葉につくと、そこにカビが発生しすす病を併発することがあります。

他にもシロマダラノメイガの幼虫、キョウチクトウスズメの幼虫に注意が必要です。

殺虫剤・殺菌剤

害虫は新芽やつぼみ、枝につきやすいので、特に春はよく確認しましょう。早期に見つけたら、殺虫剤をつかいその都度駆除してください。

炭疽病にかかったら、症状がある部分を切り取りましょう。カビが原因なので、被害が広がらないように切りましょう。

混み合った枝を整理して風通しを良くしておくのが予防になります。

アブラムシ対策として、市販のスプレータイプの薬剤を使用します。