
秋になると上品な深いブルーの花を咲かせるリンドウ。
日本では本州、四国、九州の山野に自生し、古くから親しまれてきた植物です。
その高貴な色合いと縁起の良い花言葉から、近年では敬老の日に贈る花としても人気があります。
今回はリンドウについて、植え方、育て方から増やし方まで、栽培方法を詳しくご紹介します。
リンドウの基本情報
学名 | Gentiana scabra var. buergeri |
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英名 | Gentian |
その他別名 | 竜胆・ササリンドウ・疫病草(えやみぐさ) |
科名 | リンドウ科 |
属名 | リンドウ属 |
原産地 | 日本・中国 |
リンドウの特徴
リンドウは秋を代表する美しい山野草で、古くから多くの人に好まれてきた植物です。
平安時代に、かの清少納言が随筆「枕草子」の中で「いとおかし(とても趣がある)」と言及した花としても知られています。
リンドウの仲間は世界各地に約500種が分布しており、そのうち約18種が日本に自生しています。
本州から四国、九州の広い地域の野山で、群生することなく単独で自生しているのが見られます。
リンドウの名前の由来
リンドウという名前は、リンドウの根が薬草として使われていたことに由来しています。
リンドウは漢字で「竜胆」と書きます。
生薬として利用されたリンドウの根が極端に苦かったことから、龍の胆汁のように苦い、「竜胆(りゅうたん)」と中国で呼ばれ、これがなまって「りんどう」になったと言われています。
別名の「エヤミグサ(疫病草)」もリンドウが薬草であったことから名付けられています。
リンドウの花の特徴
花は直径2㎝ほどのベル形で、先が5枚の花びらに分かれています。
リンドウの花は日が当たると開き、天気が悪い日や夜には閉じる特徴があります。
花をしっかり咲かせるには、開花期に日当たりの良い場所で育てることが大事です。
リンドウの開花期
リンドウの開花期は秋が基本ですが、近年は品種改良により、春咲きのリンドウも生まれています。
代表的な花色は深いブルーで、品種によっては淡いブルーや紫、ピンクや白色の花を咲かせるものもあります。
また、草丈も15㎝~20㎝程度の低いものから、100㎝ほどの背の高い品種まであり、バラエティー豊かです。
庭植え・鉢植えや切り花など目的に応じて品種を選びましょう。
一度植えつければ毎年咲いてくれるリンドウ。
暑さに弱いので夏越しに少し注意が必要ですが、うまく育てて長い期間楽しみましょう。
リンドウの種類
品種改良が進み、様々な園芸品種があります。
代表的なものをご紹介します。
オヤマリンドウ
秋咲きのリンドウです。
草丈約60㎝程度と小型の種です。
関東地方から四国にかけて広く山地の草原などに見られます。
晩夏から初秋にかけて、鮮やかな青い花を咲かせます。
花びらは少し開くだけで、大きく開きません。
エゾリンドウ
秋咲きの高性種です。
北海道から近畿地方の湿った草原に見られます。
大型の品種で、草丈30~80㎝に育ちます。
青い花を数輪ずつ連ねるように咲かせます。
切り花として流通します。
アサマリンドウ
秋咲きのリンドウです。
近畿地方や四国の山林に見られます。
卵型の葉をつけた茎が地面を這うように伸びて、水色の花を咲かせます。
明るい日陰を好みます。
フデリンドウ
春咲きのリンドウで、4月~5月が開花期です。
北海道から九州に分布するリンドウの仲間です。
花は日が当たると開き、曇りや雨天時は閉じています。
閉じた姿が筆のように見えることからフデリンドウと名付けられています。
同じく春咲きのリンドウとして、ハルリンドウ、コケリンドウ、チャボリンドウなどがあります。
リンドウの栽培・育て方
基本的に日当たりを好みますが、真夏は強い日差しを避けて管理しましょう。
寒さには比較的強く、屋外での冬越しが可能です。
一度地植えにすれば水やりの手間もなく、毎年花が咲きます。
リンドウの育て方情報
分類・形態 | 山野草・多年草 |
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草丈・樹高 | 10~100㎝ |
開花の時期 | 9月~11月 |
花色 | 青・水色・紫・青紫・白・赤紫・複色 |
耐寒性 | 普通 |
耐暑性 | 弱い |
特性・用途 | 落葉性 |
栽培難易度 | 普通 |
栽培スケジュール
植え付け | 3月下旬~4月 |
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植え替え | 3月下旬~4月 |
肥料 | 4月~6月・9月~11月 |
開花 | 9月~11月 |
栽培に必要な準備・環境
日当たり・置き場所
基本的に日当たりの良い場所が適していますが、真夏の暑さと乾燥、強すぎる直射日光には弱いので、夏越し対策が必要です。
芽が出てくる春先から梅雨明けまでの期間は、日当たりの良い暖かい場所で育てます。
梅雨明けから真夏は日差しが強くなるので、葉焼けを防ぐため明るい日陰が適しています。
寒冷紗などで日よけをしても良いでしょう。
秋以降、開花時期から休眠前までは再び日当たりの良い場所が適しています。
しっかり日に当てて株を充実させましょう。
寒さには比較的強いので、凍結と寒風に気を付けながら屋外で冬越しさせることが可能です。
水やり
乾燥に弱いので、水切れに注意します。
水やりの際、花に直接水がかからないように気を付けます。
鉢植えの場合、土の表面が乾いたら鉢底からあふれるほどたっぷり水を与えます。
真夏は乾燥しやすいので特に注意しましょう。冬の休眠期は水やりを控えめにして大丈夫です。
地植えの場合、植え付け直後はしっかり水やりします。
根付いた後は、基本的に水やりの必要はありません。
ただし、真夏に乾燥し過ぎているようなら、様子を見て涼しい時間帯に水やりしましょう。
肥料
植え付けの際、元肥として、少量の緩効性化成肥料を施します。
その後、4月下旬~6月と9月下旬~11月上旬に、月に2回程度、三要素が等量の液体肥料を与えます。
さらに、春と秋にそれぞれ1回ずつ置き肥を置いても良いでしょう。
肥料が足りないと、葉が黄色に変色します。
用土
水はけが良く、有機質に富んだ肥沃な土が適しています。
市販の山野草培養土を利用すると便利です。
配合する場合は、赤玉土小粒6:鹿沼土小粒4の割合で混ぜ合わせます。
腐葉土を少し足しても良いでしょう。
地植えの場合は、植え場所に直径及び深さ約30㎝の穴を掘り、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を土に混ぜ込んで埋め戻します。
真夏の強い直射日光が苦手です。
鉢植えの場合は日陰に移動します。
地植えの場合は、寒冷紗などで日よけを行い、夏越しさせます。
冬の寒さには比較的強いので、霜や寒風に気を付けながら屋外で冬越しさせます。
リンドウを育てるときのポイント
選び方
リンドウは秋ごろにポット苗や鉢が出回ります。
葉が黄色や茶色に変色しているものは避け、緑色が濃く、全体的に元気な苗を選びます。
病害虫の跡がないかどうかよく確認しましょう。
植え付け・植え替え
3月下旬~4月が適期です。
ポット苗を鉢に植えつける場合は、ひと回り大きな鉢を用意し、根鉢を崩さずに植えつけます。
6~7号鉢に1株が目安です。
鉢の底に鉢底ネットと軽石を入れ、培養土を半分程度入れます。
リンドウの苗を鉢に入れ、高さを決めながら土を足し入れます。
土の量はウォータースペースを考慮して鉢の縁から2~3㎝程の高さまでにしておきます。
植え付け後はたっぷりと水やりしましょう。
地植えの場合は、水はけや日当たりの条件をよく考えて、植えつけます。
苗よりも1~2回り大きな穴を掘り、植え付けたら最後にたっぷりと水やりします。
剪定・切り戻し
花が咲き終わったら花がらを摘み取りましょう。また、枯れた葉はこまめに取り除きます。
植え替え・鉢替え
リンドウは栄養分の吸収が早く、土が栄養不足になりがちです。
また、土が酸性に傾くとすぐに葉が黄色くなるので、鉢植えの場合は1年に1回、少なくとも2年に1回は植え替えまたは鉢替えを行いましょう。
植え替えは3月~4月が適期です。
根鉢を軽く崩して古い土を取り除き、ひと回り大きな鉢に植え替えるか、株分けします。
庭植えの場合も、生育旺盛で株が混み合ってきたら春か秋に堀り上げて株分けし、別の土に植え直します。
ふやし方
株分け、さし芽、種まきで増やすことができます。
株分け
3月下旬~4月が適期です。
植え替えの時に同時に行いましょう。
根を傷つけないように丁寧に手で引いて分けます。
自然に分かれる大きさで分けて植えつけます。
さし芽
5月上旬~6月上旬が適期です。
この時期を逃すと、その年に咲いても翌年は芽が出ず枯れてしまうことが多くあります。
種まき
花の咲き終わった後、さやの中に小さな種がたくさんできています。
採取して保存しておき、春に種まき用土にまきます。
種まき後、約1ヵ月で発芽します。
本葉4~6枚まで育ててから他の用土に植え替えます。
早ければ2年で開花します。
気を付けるべき病気・害虫
病気
さび病に注意しましょう。
さび病は、葉に黄白色の斑点ができ、次第にやや盛り上がった形になるなどし、植物の生育が悪くなる病気です。
害虫
アブラムシ、ヨトウムシ、ネコブセンチュウなどにお気を付けください。
殺虫剤・殺菌剤
さび病になったら、周りに広がらないよう、すぐに抜き取って処分します。
害虫は見つけ次第駆除します。
アブラムシ、ヨトウムシは植え付け時にオルトラン粒剤などをまいておくと発生を防ぐことができます。