灰色かび病は、文字通り、さまざまな植物の葉や、茎、花びらなどにつく灰色のカビによって、まだらの病斑が発生する病気です。
多くの植物に見られますが、病気の見分けかたが難しい場合もあります。
そこで、灰色かび病の症状や、その発生原因と、かかりやすい植物や病気の見分け方、予防法などについて解説します。
灰色かび病とは?
灰色かび病は、多くの種類の植物に発生します。植物の種類によって、症状にも違いがあります。
- 植物の葉
- 葉柄(ようへい)
- 花びら
- 愕(がく)
- 果実
など、さまざまな部位に発生するため、病気を見分けるにはコツがあります。
灰色のカビが病気の原因
どの植物でも灰色かび病にかかると病斑などがあらわれます。
症状に違いはありますがその正体は灰色の、糸状菌というカビの一種です。
ポトリチス菌というカビの菌が原因となるため、ポトリチス病とも呼ばれます。
病気にかかった葉や茎、花びらには、まだらの病斑があらわれます。
灰色かび病の病斑は、水に浸したような灰色や灰褐色の斑点で病気が進行すると、灰色のカビに覆われた症状になります。
果実にも同様に灰色のカビが繁殖します。植物の生育が悪くなり、植物全体が枯れてくることもあります。
葉が枯れると光合成ができません。茎が枯れてしまえば、その先は全部枯れてしまいます。
カビの飛散や、落ち葉などから、近くに植えた植物にも感染することがありますので、早めの対策が必要です。
灰色カビ病の発生時期
春から秋、4月から11月頃が、灰色かび病が発生しやすい季節です。
多くのカビと同様に、多湿な環境がカビには好適な環境で、梅雨時や秋の長雨など、雨の続く時期に多く発生する病気です。
室内の鉢植えなどでも、温度が20度以上ある場合には、冬にも発症する例がみられます。
灰色かび病のカビはどこから来る?
灰色かび病の糸状菌は、ふだんは土壌中の、特に腐葉土、落ちている枝や葉、果実などの植物残さ(残渣)に生息し、繁殖しています。
冬になり、植物の症状が見られなくなっても、翌年にはまた再発することがあるのは、このためです。
灰色かび病にかかりやすい植物
灰色かび病は、ほとんどの植物に見られる病気といってよいでしょう。草花や野菜、花木や果樹など、多くの植物が灰色かび病にかかります。
草花・ハーブ
- シクラメン
- ベゴニア
- ペチュニア
- チューリップ
- フリージア
- ガーベラ
- マリーゴールド
- キンセンカ
など、人気の観賞用の草花にも、灰色かび病の被害が多く見られます。
シクラメンやベゴニアの葉には、シミのような小さい斑点がいくつもあらわれます。スミレ、サクラソウなどの山野草も灰色かび病にかかります。
ハーブ類やベリー類など、多くの草花にも感染します。ひどくなると、カビが繁殖したような状態になります。
花木・果樹
バラ、あじさい、ツツジ、サツキボタンなどの花木や、ブドウや柿、梅、桃、レモンやミカンなど柑橘類ほかの果樹でも、被害にあいます。
バラやあじさいの葉には、小さい斑点がいくつもあらわれます。
花びらに病斑ができると、シミができたように見え、病斑は花の色が薄く変色したように見えます。
花によっては、茶色に近い変色になることもあります。
灰色かび病にかかると、葉が灰色のカビでまだらに枯れるばかりではありません。
蕾に菌が繁殖して、楽しみにしていた花が開花しなくなることもあります。
果実にも感染するなどの被害が見られます。
野菜・果実
きゅうりやトマト、イチゴ、レタスなどに、灰色かび病の被害が多く出ます。
トマトの実や、イチゴの蕾、ヘタにまでカビが広がることがあります。
葉物野菜は駄目になってしまうほかきゅうりやトマトなどの葉が被害にあうと葉が枯れて光合成ができなくなって生育に影響が出ます。
トマトなど、果実が灰色かび病にやられると、かびが繁殖して腐ったようになります。
灰色かび病と間違えやすい病気
育てている植物に灰色の病斑が出たり、カビのようなものが付着しているのを見つけたら、よく観察してみましょう。
灰色かび病か、他の病気かの区別をするために、症状を見分けることも大切です。
水に浸したシミのような病斑は、カビが原因となるほかの病気でもあらわれます。
病斑の色や、カビの見た目から、違いを見分けることができます。
多湿を避けて、風通しをよくする、肥料をバランスよく、などのカビ対策はほかの病気でも共通。
見分けられれば適切な処置ができます。
灰色かび病と間違いやすい病気は?
疫病
トマトやジャガイモなどの野菜のほか、草花や花木などにも発生します。水に浸したような病斑ができる点で似ています。
灰色かび病よりも病斑が黒っぽく、暗褐色や暗緑色のため、見分けられます。
病気が進行すると、こんどは白っぽいカビが繁殖した状態になります。
すすかび病・葉かび病
トマトが被害にあうことが有名です。すかび病と葉かび病とでは、原因となるカビの種類が異なるものの、どちらかの区別は困難です。
灰色かび病とは、水に浸したような病斑ができる点が似ています。
まだらの形が、灰色かび病よりも不定形で大きく、初期には白っぽい病斑で、葉が枯れるにしたがい褐色となります。
茎や果実には感染しにくいことも、灰色かび病と区別するためのポイントです。
菌核病
野菜や草花がかかる病気で、水に浸したような病斑ができるところは似ています。
- 比較的低温の時期に発生すること
- おもに地際などの茎に発生すること
- 病斑は黒っぽい褐色
- 白い綿毛のようなカビが繁殖すること
で区別できます。
灰色かび病を予防する方法
栽培環境を整えるだけでも、灰色かび病の原因はかなり取り除けます。
風通しをよくし、密植を避ける
風通しが悪いと、カビには絶好の環境となります。
植物の種類によって、灰色かび病のカビは種類が異なります。
同じ植物を広い範囲に植えていると、病気にかかったときには、すぐに広がってしまいます。
いろいろな植物を植えたり、草花や樹木の枝が密集しすぎないように、間隔をとるなどして、風通しがよくなるようにしましょう。
葉や枝が混みあっていたら、適度に枝を剪定することも大切です。
連作はできるだけ避けて
草花や野菜など、種まきをしたりして、毎年植えるような植物の場合には、前年のカビが残っていることも考えましょう。
同じ植物の連作をしないようにすると、土壌にいる菌の影響を軽減できます。
日当たりは十分に
日当たりがよいほうが、カビは繁殖しにくく、殺菌効果もあるため、適度に日光があたるように心がけましょう。
肥料のバランスにも注意
チッソ成分が多すぎると、灰色かび病が広がる原因となります。
肥料はリン、チッソ、カリウムそれぞれの成分ををバランスよく与え、肥料のやり過ぎにも注意しましょう。
水やりのポイント
適度な水やりを心がけていれば、株元に水をやるようにしましょう。
泥のはね返りが、感染を引き起こすこともあるため、泥が植物にかからないように気をつけましょう。
畑での野菜の栽培であれば、ビニールなどで地表を覆うマルチングも有効です。
灰色かび病になったらどうする?
植物が灰色かび病にやられて、葉が枯れてきたり白い斑点が目立つようになったら、まずはカビの繁殖をストップさせましょう。
ストップさせないと被害が広がってしまいます。
近くの植物に移ることがあるのは、カビが風に飛ばされて付着するせいです。
枝葉を剪定して処分
灰色かび病にかかった葉や、被害の目立つ枝は、剪定をして処分することが大切です。
剪定した枝葉は、カビが飛び散らないように片づけて、燃えるゴミとして出しましょう。
原因となるカビは土壌を住みかに繁殖する糸状菌のため、枯れて落ちた葉にも付着し消えたかに見えても、再発生することがあります。
周囲に落ちている枝葉を、念のため処分することも大切です。
薬剤の選び方と使用上の注意
灰色かび病に効く薬剤は、殺菌作用のあるさまざまなもので、いろいろな製品が販売されています。
薬剤の成分や、適合する植物の種類などを、各社の製品の販売サイトや、店頭で手にする商品のラベルで確認しましょう。
薬剤の使用にあたっては、用法や使用量などを守り、説明をよく読んで使うことも忘れずに。
まとめ
灰色かび病の被害やその原因、ほかの病気との違い、家庭でもできる予防方法の紹介などをしてきました。
早期に発見して対処することが大切です。
ふだんから植物の表情を観察して、様子に異変を感じたら、それぞれの病気の特徴を思い出してみましょう。
灰色かび病の被害を予防するためには、カビが繁殖しにくい環境を作ることがポイントです。