あらゆる植物に寄生しては食害し、駆除しても駆除しても気づけばまたいるアブラムシ。
そんな厄介な害虫であるアブラムシの天敵がてんとう虫です。
てんとう虫はその可愛らしい姿から想像できないほど食欲旺盛であり、どんどんアブラムシを食べてくれる強い味方なんです。
ただし、てんとう虫によく似た姿をした害虫もいます。
害虫の駆除目的でてんとう虫を飼う時はポイントをおさえておくことが大切です。
今回はアブラムシ対策のひとつであるてんとう虫の飼い方をご紹介します。
てんとう虫の幼虫・成虫はアブラムシ対策にぴったり
アブラムシは春頃に大量発生しては植物を食害したり、病気を引き起こす原因ともなるため早めに駆除すべき害虫です。
植物に負担をかけずアブラムシを駆除する方法のひとつがてんとう虫。
天敵を利用した害虫の駆除方法は「バンカー法」とも呼ばれ、農業の現場でも利用されている方法です。
アブラムシは繁殖力が強く駆除が難しい
アブラムシは少数であればさほど被害はありませんが、温かくなると一気に繁殖して大量発生し被害が広がっていきます。
牛乳スプレーなどの自然物を使用した駆除方法もありますが大量発生した場合は殺虫剤などが有効です。
ただし殺虫剤を使用するにも広範囲に使用する必要があり、1度駆除しても再発することもあるためアブラムシは予防対策が必要です。
てんとう虫は1日にアブラムシを20~100匹も食べる
てんとう虫が1日にアブラムシを食べる数は、てんとう虫の幼虫であれば20匹ほど。更に成虫であればなんと100匹ものアブラムシを食べてしまいます。
食欲旺盛であり、アブラムシがそばにいない時はてんとう虫同士で共食いをするほどだとか。
てんとう虫は見た目によらず食欲がすごいことが分かりますね。
アブラムシが大量発生した植物でもてんとう虫数匹が1週間ほどでアブラムシをほとんど捕食してくれるほど効果があるとされています。
てんとう虫と似ているテントウムシダマシには注意が必要
アブラムシを捕食するてんとう虫は益虫として扱われていますが、実はてんとう虫の中でも肉食、草食、菌食の3つに分けられます。
その中でも草食のてんとう虫は植物にとっては注意が必要です。
アブラムシを食べるのはナナホシテントウ
ナナホシテントウは日本で良く見かける代表的な種類のてんとう虫であり、赤いツヤのある体に黒い斑点があることが特徴です。
ナナホシテントウは肉食のてんとう虫であり、主にアブラムシを好んで食べます。
ナナホシテントウは植物には害は与えず、害虫であるアブラムシを食べてくれるため植物にとって益虫と言えます。
テントウムシダマシは植物を食べる
注意が必要なてんとう虫であるテントウムシダマシは植物を食べる草食であり、植物を育てる際に見かけたらすぐに駆除すべき害虫です。
テントウムシダマシの特徴としては、体に毛が多く生えており、つやがありません。
そのため、同じ黒の斑点があるてんとう虫でも体に毛が生えて艶のない場合はテントウムシダマシと思っていいでしょう。
テントウムシダマシは幼虫・成虫共に植物の葉の裏から表皮だけを残して網目状に食害します。
食害された植物は生育が遅れたり枯れてしまうこともあるんです。また大量発生した場合は葉だけでなく果実も食害する可能性もあります。
菌を食べるキイロテントウ
菌食であるてんとう虫としてキイロテントウなどの種類がよく知られています。
体は黄色一色のものやオレンジ色に白い斑点などの特徴がありナナホシテントウよりも小ぶりです。
菌食であるキイロテントウは植物は食べず、うどん粉病の原因となる菌だけを食べます。
植物にとっては益虫と言えますが、繁殖力が弱く、実際にうどん粉病を発症している植物を解決するまでの影響はありません。
てんとう虫の生態
てんとう虫は繁殖力が強いことも特徴のひとつであり、卵から約20日で成虫となり、約2ヵ月ほど生きることができます。
てんとう虫の卵
てんとう虫は1度に約15~40個ほどの卵を産み付け、約2日で卵から幼虫がかえります。
だいだい色の卵は、かえる直前になると卵の殻が透けてきて幼虫の模様が透けて見えます。
てんとう虫の幼虫
卵からかえった幼虫は半日くらいかけてゆっくり体を乾かします。その後2週間の間に3回脱皮をし成長します。
その間エサとなるアブラムシを400匹も食べるほど食欲旺盛です。
そのためアブラムシが足りない時は、幼虫どうしで共食いをするため、1箇所に集めず10匹ずつに分けておく方がいいでしょう。
てんとう虫の蛹
幼虫から蛹になる前にたっぷりアブラムシを食べ、1日何も食べずにその翌日に頭を下にして飼育箱の壁などにひっついて蛹となります。
蛹になり1、2日経つと蛹から1度脱皮をして本当の蛹へと変化していきます。
約1週間ほど蛹で過ごし、最初は明るい色から羽化の前になるとだんだん色が濃くなります。
蛹の頭の部分が黒くなってから約5時間たつと羽化し成虫となります。
てんとう虫の成虫
羽化したばかりのてんとう虫は最初は斑点模様はなく、だいだい色や淡い白色です。
その後飛ぶための羽が伸びてきて羽化してから約1時間半ほど経過するとだんだん見慣れたてんとう虫の姿へと変わっていきます。
羽化してから10日ほど経つと1日置きに産卵を開始。
1回に約30個前後の卵を産みますが、エサとなるアブラムシが多くいる場合は産卵の数も増えます。
1匹のてんとう虫から1か月の間に200~1000個もの卵が産まれるのです。
害虫駆除目的でてんとう虫を飼うときのポイント
では実際に害虫であるアブラムシの駆除目的にてんとう虫を飼育する場合の方法として、準備するものやポイントを紹介します。
準備するもの
- 網タイプでない飼育ケースや水槽
- ごみ取りネットや不織布
- 絵筆
- アブラムシのついた枝や葉っぱ
てんとう虫は小さいため普通の虫かごでは逃げてしまいます。
そのためプラスチックで覆われている飼育ケースや水槽などを用意しましょう。
また蓋をしないとてんとう虫は逃げてしまいます。
飼育ケースが小さい場合はキッチンのごみ取りネットや不織布などを蓋の間にかませましょう。
水槽の場合はプラスチックの板などを蓋として使用します。
絵筆はてんとう虫の幼虫を捕まえたり、成虫であればひっくり返せば筆先にしがみついて昇ってくるためあると便利です。
またアブラムシを払い落とすのにも使用することができます。
エサとして砂糖水やアブラムシを与える
砂糖水もてんとう虫のエサになりますが、やはり害虫駆除目的に飼育し多くの卵を産んでもらうためにはアブラムシは欠かせません。
アブラムシがついている植物をそのまま剪定しててんとう虫の飼育ケースに入れてあげてください。
もしくは、絵筆でアブラムシを飼育ケースに払い落としてあげましょう。
その際に、アブラムシが付いている枝をゆすってしまうとアブラムシが落ちてしまいます。
剪定したらそっとビニール袋などに入れて持って行きます。
ニセアカシアについているアブラムシは注意
てんとう虫にエサをあげる場合基本どんな植物についているアブラムシでも構いません。
しかし、ニセアカシアについているアブラムシだけは避けて下さい。
ニセアカシアの木の汁はナナホシテントウにとっては「毒」となります。
ニセアカシアについているアブラムシはてんとう虫に与えないように注意しましょう。
まとめ
アブラムシを駆除してくれるてんとう虫は益虫ですが、同じてんとう虫でも植物を食害するテントウムシダマシには注意しましょう。
見分けるポイントは体にツヤがなく毛におおわれているものがテントウムシダマシですので見つけ次第駆除が必要です。
てんとう虫は繁殖力が強いためアブラムシ対策のため飼育する際はエサとなるアブラムシを与えることで卵をどんどん産んでくれます。
数が増えたら植物へ放ちアブラムシを捕食してもらいましょう。
害虫を確実に駆除してくれる殺虫剤や農薬は、害虫と同時に益虫も一緒に寄せ付けなくしてしまいます。
殺虫剤などに頼りすぎないように益虫や天然物を使用した対策も取り入れながら植物を育てていきたいですね。