炭疽病(たんそびょう)になったらどうする?かかりやすい植物・原因・予防法を解説
葉に褐色の丸い斑点ができ、病斑が増えてやがて葉を枯らしてしまう、そんな症状を見かけたら、炭そ病が疑われます。
炭そ病はほとんどの植物がかかるといわれ、放っておくと周囲の植物にまで広がります。
でもあわてず、適切に対応すれば大丈夫。炭そ病の症状や、かかりやすい植物、その原因や予防法などのポイントを解説します。
炭疽病(たんそびょう)とは?
炭そ病にかかると、植物の葉に、褐色や黒褐色になる斑点ができます。
円形、楕円形の斑点は、さらに不定形に大きくなり、しだいに葉を変色させてしまいます。
植物全体に広がると枯らしてしまう、やっかいな病気です。
原因はカビの一種?
炭そ病の原因となるものは、カビの一種である糸状菌です。
念のため、人や家畜に重大な病気を引き起こす、細菌の炭そ菌とはまったくの別物です。
炭そ病の原因となる菌は、土壌中に普通に生息しています。風や雨、ときには虫に運ばれて、他の植物にまで被害を広げます。
どんな病気になるの?
原因となる糸状菌は、植物の表皮や内部の細胞に菌糸を延ばし、葉だけではなく、重症化すると茎、枝、果実などにも病斑を広げます。
最初のうちは、灰褐色や黄褐色の斑点ですが、病気がひどくなると褐色や黒褐色になります。
厚みのある葉では病斑がくぼむこともあり、感染が広がると斑点は大きくなります。
症状がひどくなると、最悪の場合には植物を枯らしてしまいます。
葉だけでなく果実も病気にかかる?
柿、梨、桃などの果実では、初夏から梅雨時にかけて、小さな実のうちから炭そ病にかかります。
果実の表面がくぼんで黒褐色に傷んでしまいます。
果実が枯れて、枝から落下することも多く、落下した果実はさらに病気を広げる原因となります。
せっかくの収穫にも大きな被害が出てしまうでしょう。
炭そ病にかかるのはどんなとき?
とはいっても、植物に菌が侵入すると、ただちに炭そ病になるともいえません。
植物が弱るような高温、日焼け、肥料過多や不足、水不足などにより活性が低下すると発生しやすいです。
カビの一種である菌が活性化して、発病に至ります。
炭そ病になりやすい植物
炭そ病は、草花、野菜、庭木、果樹など、多くの植物に発生します。
野菜
植物によりカビの種類は少し異なり、イチゴ炭疽病などがよく知られています。
カブ、ダイコン、小松菜などの葉物野菜や、枝豆、インゲンなどのマメ科植物、ピーマンやトウガラシなどの野菜も、被害を受けやすいです。
草花
- ベゴニア
- カトレア
- パンジー
- ビオラ
- クレマチス
- クリスマスローズ
- マーガレット
- スイートピー
などの観賞用の草花も、炭そ病のカビが感染します。
ランなどの観葉植物にとっても、炭そ病は大敵です。ランの葉が、褐色に変色してしまいます。
花木
あじさいやツバキ、ツツジ、シャクナゲ、モミジなどの花木にも、黒い病斑がみられることがあります。
見かけたら炭そ病を疑ってみましょう。
果樹
柿、桃、梨の炭疽病は、特に作物に被害を与えるものとして知られています。
ブルーベリー、ジューンベリーなどの果樹も、炭そ病の被害にあうことが知られています。
茶の木
お茶の葉を摘む茶の木でも、被害が多いことが知られています。多くの茶園では、茶葉がまだらに茶褐色に変色する被害を経験しています。
茶摘みの時期が炭そ病のカビが活発になる時期と重なり、やっかいな病気です。
観葉植物・多肉植物
意外なところでは、サボテンや多肉植物、パキラ、ガジュマル、コーヒーの木などの観葉植物などにも、炭そ病は感染します。
葉の縁などから枯れる症状があらわれます。
炭そ病の予防方法
炭そ病の原因となる菌は、カビの一種ですから、高温多湿を好み、繁殖します。
胞子が作られるのは、平均気温が摂氏15度を超え、降雨があったとき。
さらに暑い夏になり、摂氏25度前後を超える頃になると、繁殖も活発になります。
梅雨時には特に被害が多発し、秋の長雨が終わる晩秋までは注意が必要です。
冬に消えたように見えても、土壌中や、植物の組織の内部で越冬します。
いったん発病した植物が、同じ場所で翌年に再発することもあります。
密植には注意
炭そ病の原因のカビかあら黒い胞子が風に飛ばされたり、雨で流されたりすると他の植物に移ります。
植物を密集して植えていると注意が必要です。
多くの植物が被害を受けるため、気づいたら早めに防除し、ほかの植物に広がらないように対処することが肝心です。
風通しと日当たり
高温多湿を避け、風通しをよくするため、枝葉の剪定を行うと、炭疽病を予防することになります。
日当たりもよいほうが、多湿を避けられるため、植物の種類に合わせ、適度に日が当たるような環境を整えましょう。
水やりのポイント
土壌の水はけをよくしておくことも、炭そ病の予防になります。植物の種類や性質にもよりますが、水のやり過ぎは禁物です。
水をやりすぎると、湿度が高くなってしまうばかりでなく、泥はねが葉や茎にかかると、菌が付着してしまうことがあります。
泥がかかったら軽く洗い流す、野菜の畑では表面をビニールなどで覆うマルチングをするなど、泥はねを防ぐことも有効です。
ただし、マルチングは逆に高温多湿となってしまうこともあります。
ビニールの代わりに刈った草などを敷き詰めれば、高温多湿は避けられます。
肥料の偏りに注意
肥料のやり過ぎや、逆に肥料不足、成分の偏りなども、植物を弱らせてしまい、炭そ病にかかる原因となります。
植物が元気になる環境を整えることが、そのまま炭そ病の予防につながるといえるでしょう。
炭そ病になったらどうする?
植物へは、枝の傷や、古い葉など、弱いところから侵入することが多いです。
いったん感染し発病すると、元気な枝葉にまでカビの菌が繁殖していきます。
病気の枝や葉は切りとって
炭そ病が疑われる病斑を見つけたら、なるべく広がらないうちに、病斑のある葉を切り取りましょう。
特に病気にかかりやすいのは、若い枝、新梢、上に大きく伸びた徒長枝などです。
いくつもの葉に病気がみられる場合には、枝ごと切り取ってしまうことも必要です。
果実にも注意して処分しましょう
若い果実なども病斑を生じ、落下します。これらは病気をさらに広げる原因となるため、落下した果実を見つけたら、処分することも必要です。
なお、剪定した枝や葉、枯れて植物の周囲に落ちた葉や、落ちた果実には、原因となるカビが生きて残っています。
かならず、燃えるゴミとして処分することを忘れずに。
薬剤を使用するポイント
炭そ病に効く薬剤としては、殺菌作用のあるさまざまな製品が販売されています。
原因となる菌が広がると、被害が拡大して薬剤も効きにくくなります。
早めに気づいて対処するようにすれば、使用する薬剤も少なく、植物のダメージも最小限にくい止められます。
薬剤には各種の市販品がありますが、成分や適合する植物などは、各社の販売サイト、あるいは店頭で手にする商品にも記載されています。
使用にあたっては、必ずラベルを確認し、用法や使用量などを守り、説明をよく読んで使うようにしましょう。
野菜や果実など食用の植物には、特に、安全に気をつかって薬剤を選びましょう。
まとめ
炭そ病の被害やその原因、予防法や、病気になった時の対象法について紹介してきました。
広がるとやっかいな病気であることがおわかりいただけたでしょう。
被害が拡大する前に、早期に発見して対処することが大切です。
ふだんから植物の表情に気をつけて、すぐに対応できるようにしておきたいものですね。