モザイク病は、葉や花びらが縮れて、モザイク状に茶色く変色したり、まだらに枯れるなどして成長が抑えられる病気です。
モザイク病は、じつはアブラムシなどの虫が運ぶウイルスの感染により起こされる、ウイルス性の病気です。
どんな注意をしたらいいのか、症状の特徴は?モザイク病にかかりやすい植物や原因と対策、効果的な予防法などについてポイントを紹介します。
モザイク病とは?
モザイク病は、ウイルスが原因で引き起こされる、さまざまな植物がかかる病気です。
葉や花びらに症状が出て、いったんかかると治すのは大変です。
病気にかかる原因を知って、感染しにくい生育環境をつくり、予防することが大切です。
ウイルスによる伝染病が原因
モザイク病は、ウイルスに感染することによる伝染病です。
ウイルスにも種類があります。
きゅうりモザイクウイルス、カブモザイクウイルス、チューリップモザイクウイルス、トバモウイルス、その他のウイルスが知られています。
植物の名前がついたウイルスもありますが、その植物だけに感染するわけではありません。
なお、モザイク病のウイルスは、人間には病気を起こさないとされています。
アブラムシがウイルスを運んでくる
モザイク病のウイルスは、アブラムシをはじめとする虫が媒介となって、植物に運び、感染させるのです。
畑や花壇のアブラムシが嫌われるのには、こんなところにも理由があります。
アブラムシ以外では、ハダニ、コナジラミ、アザミウマ、線虫など、植物や土壌の水分を吸う害虫がウイルスを媒介します。
ところで、アブラムシはカメムシとも近縁の、アブラムシ科に属するごく小さな昆虫で、いくつかの種類があります。
薄緑色や、黄緑色、黄褐色などの小さなアブラムシが、葉や茎にたくさんついているのを見たことがあるかもしれません。
春から秋にかけてアブラムシは発生し、植物の汁を吸います。
アリに天敵から守ってもらいながら、アリはアブラムシの分泌物をもらうという共生関係があります。
テントウムシ、クサカゲロウ、アブなどはアブラムシを食べてくれます。
モザイク病にかかりやすい時期・環境
アブラムシなどの昆虫が、ウイルスを運んで起きるモザイク病は、虫が活動する季節に発生しやすくなります。
4月から10月頃が、特にかかりやすいといえるでしょう。
ただし、虫以外の経路で、モザイク病のウイルスが植物につくこともあります。
虫が死滅する冬になる前に、ウイルスに感染している場合など、冬に発症する可能性もあるのです。
モザイク病にかかりやすい植物
モザイク病にかかりやすい植物は、草花と野菜ですが、庭木などほとんどの植物にも感染します。
草花・ハーブ
- チューリップ
- シクラメン
- ストック
- サルビア
- ゼラニウム
- ダリア
- ペチュニア
- パンジー
- ユリ
- リンドウ
- ミヤコワスレ
など、多くの草花がモザイク病にかかります。
キク、カーネーション、ラン、グラジオラスなども、被害にあうことが知られています。
ゼラニウムやハーブ類も、モザイク病にかかります。ハーブ類では多い病気といってもよいでしょう。
草花の症状
チューリップやストックの葉にはモザイク状の濃淡のまだら模様ができ、花びらにも筋模様ができます。
ダリアやサルビアの葉では、まだら模様に緑が薄くなり、葉が縮れる症状があらわれます。
ペチュニアやミヤコワスレの葉には、まだら状の筋ができ、葉が縮れてチリチリした感じになるなどの被害があります。
ゼラニウムの葉にはまだら状や網目状の、緑色が白く退化した模様ができます。
モザイク病にかかると、どの草花も生育が悪くなります。
野菜
野菜では、ダイコン、カブ、白菜、菜花などのアブラナ科の野菜やトマト、ナス、ジャガイモなどのナス科の野菜が被害にあいます。
きゅうり、スイカ、カボチャ、メロンなどのウリ科の野菜ほか、ほとんどの野菜がモザイク病の被害を受けます。
大豆、インゲンなどの豆類や、ホウレンソウ、ネギ、ニンニク、春菊なども被害にあいやすく、収穫にも影響します。
モザイク病に感染した野菜は生育が悪くなり、白菜などは結球しにくくなることが知られています。
野菜の症状
アブラナ科の葉物野菜やきゅうりなどウリ科の野菜の葉には、まだら状や網目状の、緑色が白く退色した模様ができます。
葉が乾燥して縮れたような汚い様子になります。
ピーマンやトウガラシなどは、実が縮れて曲がったような出来そこないになります。
庭木
バラやあじさい、沈丁花(ジンチョウゲ)など多くの花木も被害にあってしまいます。
ナンテンなどの庭木、夾竹桃(キョウチクトウ)リンゴやミカン、レモンなどの果樹も、モザイク病のウイルスに感染します。
パキラ、ガジュマル、コーヒーの木などの観葉植物も同様に病気にかかります。
庭木の症状
モザイク病にかかった樹木は、新緑の季節に発症することが多いです。
葉に筋やまだら模様ができ縮れたり、波打つように変形したりといった症状があらわれます。
葉が白く変色、変形していないか、水やりの際などに気をつけるとよいでしょう。
モザイク病を予防する方法
モザイク病にいったんかかると、ウイルスを感染に退治することは難しく、株ごと処分しなければならないこともあります。
したがって予防がとても大切です。
モザイク病の原因であるウイルスは、春から秋にかけて、虫によって運ばれ、植物の汁を吸うなどしたときに感染します。
ただし、ウイルスは冬に死滅するわけではなく、アブラムシは卵で越冬するなど、感染が減るために発生が減ることになるのです。
虫よけ
アブラムシを退治するには、木酢液や、ニームオイルなどの忌避剤を植物にスプレーする方法があります。
また、市販の酢を薄めたスプレーにも同様の効果があり、自作することもできます。
自作するときは、酢を水で100倍前後に薄めるだけでもよく、トウガラシ、ニンニクを漬けてアブラムシが嫌がる臭いを加えることもできます。
アブラムシの習性を利用して、株元にアルミホイルなどの光を反射するものを敷くことも効果的。
線虫などの、土壌にいる虫からも感染を防ぐため、光沢のあるビニールなどでマルチングするのもいいでしょう。
昆虫の飛来が多いときには、虫よけネットを張る方法もおすすめです。
アブラムシの発生しにくい環境をつくる
アブラムシが発生しやすい原因には、肥料にチッソ分が多すぎることがあります。肥料の偏りや、与えすぎに注意しましょう。
植物を密集して植え、風通しが悪くなっていると、アブラムシが湧きやすいことも知られています。
草花や野菜が密集しすぎないように、間隔をとるなどして、風通しがよくなるようにしましょう。
庭いじりの道具の扱いと手入れにも注意
アブラムシを駆除するために使ったハサミや手袋など、植物の手入れのための道具からも、ウイルスが感染することがあります。
スコップや鎌、クワなども同様です。
使ったらきれいに泥を落として洗い感染が疑われるときはアルコール消毒をしたりして、道具がモザイク病の原因にならないようにしましょう。
健康な株や種子を選ぶ
モザイク病のウイルスは、苗や種子、球根、種芋などからも感染します。
健康そうな苗や、信頼できる種子、球根、種芋などを選ぶように心がけたいものです。
病気が出た土壌の周辺で採取した種子などは、使わないように気をつけましょう。
モザイク病になったらどうする?
モザイク病にかかったら、よほど初期か、部分的な感染でない限り、草花や野菜の治療をするのは難しいものです。
ただ、樹木など長期間生育するものは、病気にかかった枝葉を剪定するなどして、症状は抑えられます。
症状の出た枝葉の剪定と処分
モザイク病にかかった葉や、被害の目立つ枝は、剪定をして処分しましょう。
ウイルスは植物の組織内、特に水分に移動によっても移るので、病斑の目立つ部分は枝ごと剪定したほうが、回復が早いかもしれません。
剪定した枝葉は、かならず、燃えるゴミとして処分しましょう。
病気の植物の周辺の土の消毒
モザイク病の原因となるウイルスは、土壌を住みかにします。落ちている枝葉や、腐葉土などを、念のため処分することも大切です。
土壌そのものを土壌消毒剤などで消毒することもできます。土壌消毒剤の使用にあたっては、説明をよく読んで使うようにしましょう。
食用にする野菜やハーブなどでは、安全性の面にも気を使わなければなりません。
表土の日光消毒にも効果があります。
日光消毒は、土をビニール袋に入れるか、シートなどの上に薄く敷いて、太陽の光に半日も当てれば効果的です。
まとめ
モザイク病の被害やその原因、予防方法について説明をしてきましたが、ウイルスにかかったら治療が難しいことがおわかりいただけたでしょう。
なによりも、アブラムシなどが発生しにくい環境をつくり、モザイク病ウイルスから植物を守る予防が大切です。
葉にまだらの模様がないか、縮れていないかと、ふだんから植物の様子を見ておくのもいいですね。